書誌情報:日本図書センター,237頁,本体価格1,500円,2012年11月15日発行
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競争と学校制度,格差・不平等と学歴の現実から出発し,競争・学歴社会をありのままに受容することを主張する点では,建前論に終始してはいない。
大卒と非大卒を分析すると,学歴において明確な分断線が引かれ,大卒は大卒子弟を,非大卒は非大卒子弟を再生産する仕組みの指摘は盲点だった。将来設計の第1段階ともいうべき18歳の選択はすでに社会に組み込まれた競争・学歴社会の表れにすぎないわけだ。
学校での競争が即社会での競争ではないことを指摘し,また,高卒での社会参加の意味も大きいとはしている。「ブレや迷いさえ生じなければ,大卒学歴よりも軽快な暮らしを約束する」(=「軽学歴」)(179ページ)。ここから,学費の軽減策よりも非大卒層優遇策の必要性を説く。
社会階層論や教育社会学からは現実の大きな構造が見えすぎてしまって,その構造を作り出している個々人の存在はあまりに小さい。厳しい現実への対応を考えるという著者の切り口からは超えがたい大きな岩が見えてくるばかりだ。
「たまたま生きていた時代がよかった」自分をさておいて,大学生に「人生を形づくるうえで最も重要なこのタイミングで,のんびりした年月を過ごしてしまうことはお奨めできません」(141ページ)となるとほんと現実は厳しい。
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