736海老原嗣生著『就職に強い大学・学部――偏差値・知名度ではわからない――』

書誌情報:朝日新書(340),204頁,本体価格720円,2012年3月30日発行

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大手人気企業に入るには旧帝大系・早慶せいぜい MARCH まででその他は厳しい(つまり学歴・大学歴差別は存在している),それらごくトップクラスの大学の文学部出身者は大手人気企業には就職できていない(つまり学部別差別もある),女性が大手人気企業で総合職で働ける可能性があるのは「マスコミ」と「化・日用品」の業界である(つまり女性差別も歴然としてある)。「超ブランド大学」に限っても4万人の卒業生であり,人気100社の採用者数は2.61万人である(全卒業生の5%弱)。もともと大手人気企業に入るのはごく少数である。大学生の就職先の3分の2は中小企業である。
こうした就職市場の現実の構造を直視して,学生は大学受験から対策を練り(つまり大手人気企業に入るためにはそれなりの大学と学部に進学せよ,女性は総合職を目指すなら社会科学系や国際系の学部を選べ),大学は就職率のマジックの透明性を高める(とくに就職非志望者の詳細の公表)ことを直言している。
大卒求人は減少していない。「難関度合いの体感値が一人歩きで上昇していった結果が,今の氷河期の一面」(53ページ)であって,その意味で就職氷河期などはなく,出身大学の分相応に最初から中小企業を目指せばいい。
――ものいいは別として評者の大卒労働市場の見方とそう変わらない。基礎学力が身につくようなカリキュラムの大学への要望は,本書の文意からすると高校の学び直しのようだ。大学に優良中小企業開拓を勧めるのは間違っていない。留学生と競争して明日の産業である「飲食・サービス業界」(居酒屋,ラーメン屋,牛丼屋,開店寿司,コンビニなど)で活路を見いだせるかどうか。いや,明日の産業には「超ブランド大学」以外の大学からかなり入っており,今日の産業なのだが。