687沢田健太著『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話――知的現場主義の就職活動――』

書誌情報:ソフトバンク新書(177),262頁,本体価格730円,2011年10月25日発行

  • -

大学のキャリア形成支援に携わる著者(ペンネーム)による本書は,タイトルのシュールさとは別に大学教育とキャリア形成支援との繋がりを強調する真っ当な就活本である。大学現場を熟知しているだけに学生,教職員,親,企業などへの注文は具体的である。大学や大学生一般ではなく,現実の大学評価を直視した就活実践論(大学名と就活とは強い相関があるとの会社側の本音,大学受験を真剣にやった学生は就活でも有利など)が全体を貫いていると読める。
大学のキャリア形成支援の中核・キャリアセンターを切り口にして,「行き過ぎた適応主義」に陥っているキャリア教育批判を織り交ぜている。外部教員による一見「熱心な」キャリア教育は,VPI職業興味検査などによる心理検査を中心にする「行き過ぎた心理主義」,やたらに細かいマナー講座による「行き過ぎた態度主義」,コミュニケーション能力・社会人基礎力などに代表される「〜力」を強調する「行き過ぎた能力主義」であり,学生を困らせている。まったくその通りだ。「大学の勉強のひとつすら,本気で取り組んだことのない学生たちが就職活動をする」(47ページ)。キャリアセンターは「これからの厳しい社会を見据えて,そこで最低限必要な知力は大学の勉強を通して養えるんだよ,と学生に教える立場であるべき」(同)なのだ。
「教授センセイの頭の中身」(54ページ)――自分でやるべき作業を職員に押しつけ,大事な会議には出ず,下手な言葉遣いをするとキレる――は,(他人事のように)どこの大学にもいる。異議主義,ときには抵抗の必要性や方法を教えるのもキャリア教育のうちは森岡本(下記関連エントリー参照)も指摘していた通りである。
学生の就活対策本の要素も本書に盛り込まれている。業界研究本を読む,OB・OG訪問をするなどナビサイト以外のこと「も」する大事さの指摘,説得力のある留年でなければ意味がないとのアドバイス,ふだんの大学生活・学びが結局ものをいうことなどは就活生用でもあるし大学生用でもある。
就活にウルトラCはない。