書誌情報:みすず書房,193頁,本体価格1,800円,2010年7月26日発行
- 作者:北山 修
- 発売日: 2010/07/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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NHK教育テレビで放送された「北山修 最後の授業」を一部含んだ書籍版。自分の講義をテレビに露出させることによって,「言葉の臨床心理学である精神分析」がテレビ的コミュニケーションとは異なり「二者間内交流」であることを示そうとの意図をもっている。
「きたやま おさむ」としての自己分析からフロイトをはじめとする精神分析の話でありながら,臨床例を極力排したことで,人間論や日本文化論にも近接する講義・講演となっている。人間の深層心理を扱うとなれば,人間としての日本人の心性が普遍性をもつのかを問題にしなければならないということだろう。
「きたやま おさむ」としてのフォークル時代は「悪魔に魂を売る瞬間」(69ページ)・「悪夢のような毎日」(同上)であり,精神分析家になる道を選んだとの回想部分は,評者にもある程度理解できるような気がした。
「マスコミに出ることが素晴らしいことなのか,広く売れることが素晴らしいことなのか,紅白歌合戦に出ればいいのか,ほんとうに。そんなことはない。私にとってはライブハウスの感動のほうが絶対に感動的」(72ページ)という。今でも手作りの千枚単位のCDをつくり続けているという「きたやま おさむ」。北山修は「きたやま おさむ」を捨てたのではなく,ずっと北山修は「きたやま おさむ」のままである。
本文中ではないが,「退官」(目次のあとの再録・編集の説明と裏表紙の内容説明)の文字があった。2004年3月をもって国立大学教職員は官職(文部教官,文部事務官,文部技官など)ではなくなったはずだ。いまなおこんな使い方を見ると評者の体感温度がぐぐっと上がってしまう。
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