書誌情報:新潮社,221頁,本体価格2,600円,2012年1月20日発行
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展覧会や展示会には図録(カタログ)が付き物だ。図録がない会に会うと手抜きと思うことにしている。
本書は図録ではない。1年間に及ぶ長期の「アートの起源」展(科学:2010年11月21〜2011年2月20日,建築:2011年3月6日〜5月15日,歴史:2011年5月29日〜8月21日,宗教:2011年8月28日〜11月6日,丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)の図録作成過程の産物である。「その作品をかたちづくるイメージが,言葉によって触発されたことをも,併記するために,図録でもなく,評論集でもない,詩集でもなく,独白でもない,なにか」(「序文」)が本書である。
作品と言葉の往還を活字にしたものといえるかもしれない。人類の起源とアート(本書では「技術」とも表現している)との関係を遠景におき,表現としてのアートの意味を考える論集である(「評論集ではない」とのうえの言葉とは裏腹に,表紙には「懐古的美術評論集」の惹句が踊っている)。
昭和天皇が大好きという著者の,共産党宣言とシュールレアリズム宣言とも「明日の予定を捏造」(76ページ)したという写真論や中沢新一との対談での「アートアナーキズム」論は,金銭価値で評価され取り引きされるアートへの批判的立脚点だろう。「アートとは,いつの世にあっても,新しい価値を創造する,または,捏造するという行為」(142ページ)と著者が言うとき,日常性から生まれながらそこを突き抜け非日常性に昇華させてこそアートだという信念を感じた。
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