133芸団協編『芸能活動の構造変化――この10年の光と影――』

書誌情報:財団法人日本芸能実演家団体協議会発行,丸善発売,ii+219頁,本体価格3,000円,2007年9月30日

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総理府(当時)『文化に関する世論調査』(2003年)によると,それまでの10年間で音楽,演劇・演芸,舞踊などの鑑賞行動において劇的な変化があったという。30歳以上から60歳代までの男性の鑑賞行動が低落し,理由として「関心がない」が10%以上も増加した。90年代後半から文化芸術への関心を失わせた何かがある。
本書は,かつて『芸能白書』(1997年,1999年,2001年)として刊行していたものを,研究者・実務家・大学院生インターンの共同研究として再構築したもので,2006年度の文化庁芸術団体人材育成支援事業として取り組まれた。文化芸術の基盤が変化しつつあり,エンターテインメント・ビジネスの進展とその他にみられる供給の二極化と消費の格差拡大・階層化がその特徴として指摘している。
総論的な第1章「社会状況の変化と芸能と国民生活」から芸能にかかわる各分野(公演活動,コンテンツ生産の状況,実演家とその組織,劇場・芸能への支援,国民の鑑賞行動など)を分析した第2章以降第7章までの7章構成である。既存の官庁統計(『国勢調査』,『社会生活基本調査』,『サービス業基本調査』,『全国消費実態調査』および『家計調査』など)のほか関連データをまとめた図表は活用できる。
「文化芸術の振興に関する基本的な方針」として閣議決定(2007年2月)された国の基本方針は,「文化芸術活動の戦略的支援」を謳っている。また,「政策の形成や,各施策の企画立案及び評価等に資する基礎的なデータの収集や各種調査研究の充実を図る」ことが盛り込まれた。5年後に見直される文化政策が,本書のような文化芸術の供給側からだけでなく需要側のニーズを含む実証的データにもとづくものであってほしい。