クリントン政権時国防長官を務めた(1994年2月3日から1997年1月23日)ウィリアム・J・ペリーの「私の履歴書」(日本経済新聞)に注目している。「事前協議」問題ではトップニュースで伝えていた(これを普通「マッチ・ポンプ」という)。
今日(2010年12月8日)の第8回目は「キューバ危機」だった。ペリーは当時最新のインテリジェンスを分析する仕事に就いていた。彼の分析結果はそのままCIA本部→CIA長官→ケネディ大統領に直接報告されていた。
ペリーはこう書いている。「キューバ危機の発端は61年1月に大統領に就任したケネディによる対キューバ強硬政策にまでさかのぼる。当時,米国はキューバで革命政権を樹立したフィデル・カストロを「共産主義者」と認定しており,CIA主導による政権転覆工作(ピッグス湾事件)などを試みていた」と。
「米国は…政権転覆工作などを試みていた」のだ。統合参謀本部の一部にあった米軍によるキューバ侵攻論を,彼やケネディは押しとどめ,核戦争を未然に防いだ,と続くのだろう。
朝鮮戦争は「北」から,ベトナム戦争は「トンキン湾事件」を口実にアメリカから,それぞれ口火が切られたのはいまや周知の事実だ。気に食わぬ「共産主義者」であるなら「政権転覆工作」が許されるというアメリカの「正義」は今も不変だ。著者をして「核なき世界」を目指させる契機になったとはいえ,政権転覆工作が免罪されるわけではない。
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