書誌情報:平凡社新書(678),230頁,本体価格780円,2013年4月15日発行
日本経済はなぜ衰退したのか: 再生への道を探る (平凡社新書)
- 作者:伊藤誠
- 発売日: 2013/04/15
- メディア: 新書
- -
アベノミクスの「三本の矢」(機動的な財政政策,大胆な金融政策,民間投資を喚起する成長戦略)ははたして日本経済再生をもたらすのか。マルクス派からの雇用と生活の安定を実現するための政策はアベノミクスではない。アベノミクスは,「新自由主義を基調としながら,あくまで「緊急経済政策」としてケインズ主義を便宜的・局部的に利用する」(15ページ)だろうからである。
現代資本主義への批判的軸におかれるのは宇野理論の「労働力商品化無理論」である。それをもとに新自由主義的グローバリゼーションの帰結として金融化資本主義と特徴づけ,労働力の金融化,労働力の債務危機から生活基盤の不安定化と格差の拡大を説明する。
本書の主張である,ケインズ主義的財政・金融政策を手段と使い,現代化した社会民主主義と社会主義の政策提案の中味は検討に値する。グリーン・リカバリー戦略,ベーシック・インカム構想,地域通貨の理念と実践がそれだ。「21世紀型の社会民主主義と社会主義」は,あらゆるコミュニティ,協同組合,NPO・NGOなどの力量次第であることをあらためて教えている。経済政策を政治家や官僚の手から地域住民や協力の組織に取り戻すことでもある。
- 関連エントリー
- アンドルー・グリン著(横川信治・伊藤誠訳)『狂奔する資本主義――格差社会から新たな福祉社会へ――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20071225/1198576708
- 北原勇・伊藤誠・山田鋭夫著『現代資本主義をどう視るか』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20070208/1170902749
- 1年前のエントリー
- 2年前のエントリー
- 3年前のエントリー
- オルセー美術館展2010「ポスト印象派」(デジタル情報)→https://akamac.hatenablog.com/entry/20100611/1276264619
- 4年前のエントリー
- 国立大学法人の「埋蔵金」報道はおかしい→https://akamac.hatenablog.com/entry/20090611/1244714778
- 大学犬はなちゃんの日常(その122)→https://akamac.hatenablog.com/entry/20090611/1244711451
- 5年前のエントリー
- 6年前のエントリー
- 渡辺雅男著『市民社会と福祉国家――現代を読み解く社会科学の方法――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20070611/1181563548