617松山大学編『マツヤマの記憶――日露戦争100年とロシア兵捕虜――』

書誌情報:成文社,237頁,本体価格2,000円,2004年3月30日

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松山大学が創立80周年を迎えた2003年に企画した「市民フォーラム2003 捕虜の町・国際都市マツヤマ ロシア兵捕虜収容所開設百年を前にして」をもとに,日露および日本の他の収容所との比較,ロシア側からの視点などから「マツヤマ」を多角的に検証しようとしたもの。2003年11月に実施した松山大学総合研究所が実施した地域調査によると,ロシア兵捕虜が松山にいたことを知っていたもの58%,秋山好古・真之兄弟が松山出身であることを知っていたもの43%とある。「坂雲」の第2部放映後の現在では,双方の比率はさらに上がっているかもしれない。
本書には,ロシア人墓地の変遷,捕虜のうち最大少数民族であるポーランド人捕虜,ノヴゴロド州マドヴェージ村日本人捕虜収容所,捕虜収容所の経費負担などのほか,ロシア人墓地墓碑配置図や関係年表もある。捕虜や収容所による民衆・地域レベルの「帝国」意識の醸成や国際規準の捕虜扱いの限界も描かれている。
ぼっちゃん劇場のミュージカル「誓いのコイン」はロシア人捕虜ニコライと看護婦サチとの交流を中心に描いた日露交流の物語である(→http://www.botchan.co.jp/)。