037山本信太郎著『東京アンダーナイト――“夜の昭和史”ニューラテンクォーター・ストーリー――』

書誌情報:廣済堂出版,318頁,本体価格1,600円,2007年2月28日

東京アンダーナイト―“夜の昭和史”ニューラテンクォーター・ストーリー

東京アンダーナイト―“夜の昭和史”ニューラテンクォーター・ストーリー

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東洋一と言われたナイトクラブ「ニューラテンクォーター」でその事件が起こった。1963(昭和38)年12月8日の力道山刺殺事件である。著者は当時ニューラテンクォーターの社長をしており,事件現場の責任者として,また唯一の目撃者として,事件当日事件に遭遇した。力道山事件については当時も現在も目撃者がいないことになっており,その一部始終が初めて明かされる。2003年に力道山の妻田中敬子によって書かれた『夫・力道山の慟哭――没後40年未亡人が初めて明かす衝撃秘話――』(双葉社asin:4575295817)によって語られていること――事件は偶発的に起こったものであり,暴力団同士の軋轢など関係なかった――を知り,ようやく封印を解いたという。
本書は確かに力道山事件を導入としているが,むしろ多くの紙数を占めているのはナイトクラブに出入りした各界の有名人との交流だ。韓国ロビー,児玉機関,暴力団,皇族,GHQ,政治家,そして芸能人。1959年の開店から89年の閉店まで40年にわたる一ナイトクラブの歴史は,紛れもなく東京の夜で繰り広げられた昭和史の一齣である。