1222アルフレート・ボーナー著(佐藤久光/米田俊彦共訳)『同行二人の遍路――四国八十八ヶ所霊場――』

書誌情報:大法輪閣,254頁,本体価格2,000円,2012年5月10日

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著者は,28歳から34歳までにあたる1922(大正11)年から1928(昭和3)年までの7年間,創立間もない旧制松山高等学校でドイツ語を教えていた。二人の兄ヘルマンは旧制大阪外国語学校,ゴットロープは旧制高知高等学校で教鞭をとっていたことがある。ヘルマンは長く教鞭をとり日本文化研究者としてよく知られている。
ルフレートの名は,旧制松山高等学校創立65周年記念『真善美』(1984年)で知ってはいた。その彼が自身の遍路経験と該博な知識をもとに本書を1931(昭和6)年に出版していた。一外国人によって四国遍路に関する多くの文献資料を読み込み,道標,寺院の伽藍,仁王門,本堂,塔などの建築物だけでなく,道中のエピソードや自然景観,納札や往来手形,慣習などにも触れている。当時としては珍しいカメラ撮影によって寺院の建築物,田園風景,暮らしと遍路などを捉えていた。
原書が当時東京にあったドイツ東洋文化研究協会から出版され,ごく一部のドイツ語話者によってだけ知られていた。それがようやく80年を経て翻訳された意義は大きい。
そんな折り,著者のご子息が教鞭をとった旧制松山高等学校の唯一の建物である章光堂を訪れていた(→https://www.ehime-u.ac.jp/post-53988/)。