書誌情報:明石書店,92頁,本体価格2,000円,2007年3月31日
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ジョニー・シーガー著『地図でみる世界の女性』(明石書店,2005年,[asin:4750320617])は女性に関する特徴を世界の国別に地図で示した。本書は時間(経年変化)と空間(都道府県から町丁目)の視点から日本の女性を取り巻く状況を地図に落とし込んだものだ。女性のライフイベントに即した章構成とテーマ毎の地域的差異といくつかのコラムが特徴となっている。ジョニー・シーガーの「刊行に寄せて」によると,この種のアトラスは自著のほか『インドのジェンダー・アトラス』,『アメリカのジェンダー・アトラス』など数えるしかないという。「女性の生活を文字通り地図にすることで,ある国の女性間の類似性と差異,連続性と対比とを的確に表現できる」。女性の現在を可視化するわけだ。「ヘンだと思うことそのものが社会変革」とは言い得て妙である。われわれがこの地図を見てどのように解釈するか。われわれの手にゆだねられている。ジェンダー,フェミニズム,セクシュアリティなどのタイトルを持った本を多く出している明石書店。あえて「ジェンダー」の文字を日本語タイトルにしなかった理由について詮索することはやめよう(英文表記は Gender Atlas of Japan となっている)。
女性問題に関心を持つ地理学者の共同労作を再利用するにはカラーコピーかスキャンするしかない。デジタルでの提供を検討してほしい。
本書のコンテンツを表にする。著者たちの問題の焦点の所在と観点や現代の女性問題(=男性問題)が見えてくる。
女性のライフイベント | 指標 | サブタイトル |
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I 結婚 | ||
1 | 未婚率 | 晩婚・非婚が増えている大都市 |
2 | 生涯未婚率 | 独身未婚男性の急増 |
3 | パラサイト・シングル | 近畿地方で高い親同居率 |
4 | ひとり暮らしの未婚者 | 都市に集まる「自立」した女性たち |
5 | 持ち家に住む単身者 | 女性は都心,男性は郊外 |
6 | 多様化する家族構成 | サポート求める子育て中の世代 |
7 | 農山村の「嫁不足」 | 晩婚化する男性と外国人花嫁の増加 |
8 | 離婚 | 公的サービスの充実した地域に住む離別者 |
コラム1 | 増える「出産難民」 | 地方で深刻な産科医不足 |
コラム2 | 人工妊娠中絶 | 地域差が大きい若年の中絶率 |
II 仕事 | ||
9 | 女性労働力率 | 3世代同居率の高い地域で多い働く女性 |
10 | 専業主婦率 | 大都市圏郊外に多い専業主婦 |
11 | 非正規雇用 | 既婚女性に多いパート労働者 |
12 | 失業と高卒無業 | 女性に多い潜在的失業 |
13 | 女性比率が高い職業 | 地域により異なる業種 |
14 | フリーターとニート | 高い女性のフリーター率 |
15 | 地方議会に占める女性議員 | 大都市圏ですすむ女性の参画 |
16 | 女性にとっての公務員職 | 長く続けられる職場 |
III 子育て・教育 | ||
17 | 合計特殊出生率 | 低下の一途・少子高齢化の要因 |
18 | 保育サービス | 大都市で不足する子育て支援 |
19 | 家事時間と通勤時間 | 大都市圏郊外で高い女性の家事負担 |
20 | 年齢階級別女性労働力率 | 減らない子育て期の仕事中断 |
21 | 大学進学 | 地元志向の強い女子 |
22 | 高卒の就職移動 | 減り続ける大都市への流出 |
23 | 学歴 | 大都市に集まる高学歴女性 |
コラム3 | 在日外国人の男女比 | 多民族化する日本 |
コラム4 | 子育て費用 | 大都市で大きい格差 |
IV 生活と福祉 | ||
24 | 母子世帯 | 離婚率上昇により増加する母子世帯 |
25 | ドメスティック・バイオレンス (DV) | 相談件数・保護者数ともに増加 |
26 | 女性の高齢者 | ひとり暮らし高齢者比率は都心部でも高い |
27 | 介護 | 高齢化問題は女性問題 |
28 | 寿命と死因 | 男女差よりも大きい死因の地域差 |
コラム5 | 女性と犯罪 | 大都市圏で多い性犯罪被害 |
コラム6 | 自殺 | 男性は女性の3倍 |
付録 | ||
1 | 日本地図の読み方 | |
2 | 表現によって変わる分布図の情報 |