026『科学』第77巻第5号(2007年5月号)特集「《競争》にさらされる大学――法人化後の評価」

2004年4月の国立大学法人化を受けて国立大学は2008年度から6年周期でおこなわれる中期目標の達成状況評価が始まる。大学評価・学位授与機構が教育研究の状況を評価し,その結果を尊重して文科省に設置された国立大学法人評価委員会が総合評価する。大学評価・学位授与機構はこれとともに認証評価する機関でもある。認証評価にはすべての大学・短大・高専が7年に1度受ける義務がある機関別認証評価と法科大学院等の専門職大学院が5年に1度受ける義務がある分野別認証評価がある。大学等の組織改編は「事前規制から事後チェック」に変わり,認証評価は大学版規制緩和政策の「事後チェック」にあたる。
本特集は,法人化後の大学(主として国立大学)を対象にしたモノグラフの集積による大学論である。論者によって現状の理解について温度差がある。「劇症悪化」(508ページ)・「四歩下がって一歩前進」(520ページ)・「実学志向の総仕上げ」(522ページ)・「危機に瀕する可能性」(527ページ)など法人化および法人化後の大学に危機感も強い。高大連携,地域連携などに新たな希望を託す論者もいる。大学関係者はもちろん多くの人に読んでほしい。岩波書店のページには目次が掲載されている(http://www.iwanami.co.jp/kagaku/index.html)。こちらの一覧表がずっと見やすいはずだ。

執筆者 所属 トピック
小平桂一 総合研究大学院大学 社会機関としての大学
村上陽一郎 国際基督教大学 知識人としての「常識」と「賢慮」を磨くために
藤永 茂 カナダ・アルバータ大学(名) 大学:考える人間のサンクチャリ
新藤宗幸 千葉大学 批判精神を持った教養人の養成を
佐々木賢 神奈川県高校教育会館教育研究所 高校生の現実から大学をみる
(対談)池内 了・苅谷剛彦 総合研究大学院大学東京大学 果たして大学は”役立たず”だったのか――議論の土台を問う――
小沢弘明 千葉大学 知識資本主義と新自由主義大学
荒船次郎 大学評価・学位授与機構 国立大学法人等の教育研究の評価について
高谷亜由子 文科省 欧州の高等教育改革
池部織音 ユネスコ 国際的な視野を開く
清貞智会 SRI International The Stanford Challenge: Stanford大学が全学をあげて取り組む研究・教育改革
岩田 想 インペリアル・カレッジ・ロンドン イギリスと日本の大学の違いについて――研究者の立場から――
黄 福涛 広島大学 中国の大学の変化――理科系における人材養成の動向を中心に――
羽田貴史 東北大学 国立大学法人の財務をどう読むか
福田正己 北海道大学 法人化のもとでの研究業績評価――ヨーロッパとアメリカそして日本――
原 千秋 京都大学 ティーチング・エヴァリューションの功罪
蔵治光一郎 東京大学 長期データ蓄積型研究の危機――80年におよぶ森林環境研究を例に――
野地澄晴 徳島大学 ”研究の多様性を支える”ために
松浦克美 首都大学東京 徹底的な学生本位の姿勢から状況の打開を図る――高大連携の取り組みを中心として――
尾久土正己 和歌山大学 地域との連携で活路を開く
三村信男 茨城大学 地域連携と新しい大学モデル
清成忠男 三鷹ネットワーク大学推進機構 「知力の都市」を形成する
大隅典子 東北大学 変わったこと,教わっていないこと
川勝 博 名城大学 教員養成大学が教科教育軽視でいいのか
川上紳一 岐阜大学 いま求められている教員養成カリキュラムとは何か?――「理科教育データベース」の構築から見えてきたもの――
福江 純 大阪教育大学 教育系大学で起こっている現象
関沢正躬 東京学芸大学 軌道修正の兆しを読む
須藤 靖 東京大学 ドトールとローソンの先
片峰 茂 長崎大学 地方総合大学における法人化のインパク
入舩徹男 愛媛大学 地方大学における1つの研究戦略
牛木辰男・高橋 均 新潟大学 医歯学系と研究所の場合――法人化大学の一教員・一研究者として――
久保田健夫 山梨大学 統合・大学院化・法人化が山梨大学にもたらしたもの
谷口吉光 秋田県立大学 教職員人事制度に根本的変更
白楽ロックビル お茶の水女子大学 法人化 四歩下がって一歩前進
金森 修 東京大学 産業社会とは異なる規範を示す空間に
高橋義人 京都大学 教養なき大学の惨めな行く末
小松美彦 東京海洋大学 大学の惨状とそれを取り巻く歴史的構造
上出洋介 京都大学 法人化と附置研・全国共同利用研は両立するか
石黒武彦 同志社大学 法人化という手品