063坂村健著『変われる国・日本へ――イノベート・ニッポン――』

書誌情報:アスキー新書007,187頁,本体価格720円,2007年3月27日

変われる国・日本へ イノベート・ニッポン (アスキー新書)

変われる国・日本へ イノベート・ニッポン (アスキー新書)

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日本の未来を考える時に必要なことはイノベーションが生まれるような環境整備(教育,投資,インフラ)が重要だと力説している。イノベーションとは技術革新だけでなく制度改革も含んでいることを強調し,オープンとベスト・エフォートという哲学を解説し(第1章),コンピュータの誕生からイノベーションの持つ意義を確認する(第2章)。あらゆる問題の解決のためにはケース・スタディの繰り返しが必要であることを紹介し(第3章),インフラ・イノベーションの例としてトロン・プロジェクトをあげる(付録)。
他方で,数カ所で指摘しているアメリカの豊富な研究資金との相違は未解決のままである。アメリカでは,民間まで含めて全体の研究開発費のほぼ半分を,軍事予算が何らかの形で支えているという事実の指摘は「変われる国・日本」の文脈とはまったく交叉しない。オープン,ユニバーサル,ベスト・エフォートのキーワードは蟷螂の斧のように見える。軍事支出の限界とそれに変わる代替を示すことでなければ説得的ではない。