008ウィリアム・モリス展および図録

第15回メセナ八幡浜美術展「ウィリアム・モリス展――19世紀イギリス,華麗なる装飾芸術の世界――」(八幡浜市民ギャラリー,2007年10月5日〜11月11日)に行ってきた。今年度「文化経済学」を担当し,たまたまスミス,ラスキン,モリスと文化経済学の源流について触れているところだった。壁紙,テキスタイル,ステンドガラス(バックライトフィルムによる再現),家具など66点の装飾芸術の一端が披露されていた。モリスについては講義でも触れ,壁紙などの複製品を見てきたが,現物に触れるのは初めてだ。産業革命が進行するイギリスにあって,装飾芸術を通じて「生活の芸術化」を意図したモリスの仕事と木版や天然顔料をつかって制作した作品を見ることができた。
企画協力したプレーントラストが全国各地で開いているようで,以下に紹介する図録やグッズもここの制作だ。図録は2005年7月15日付で作成されており,全国で開かれているモリス展共通のもの。これとは別に「出展作品目録」が配布されていた。6ページものの小さなものとはいえとても親切な目録だ。目録,飾りタイル,コースターを購入。
さて,会場の入口では,市民ボランティアガイド「八幡浜みてみん會」のメンバーに声をかけられ,よかったら町並みを案内するという。案内人Mさんに案内を頼む。八幡浜は明治から昭和初期にかけて港町として栄え,「伊予の大阪」と呼ばれていたそうだ。木板や白壁のふるい町並みがいくつか残っている。「地細工紺屋 若松」(796-0068 八幡浜市浜之町182-2,1894-24-0691)【町並みウォーカーの紹介サイト】は5代続く藍染めの店だ。創業文政5年というから185年続く老舗だ。詳しい作業工程を説明してくださった。写真入りの手作りのパンフレットをいただいた。6代目は息子さんが継いでくれるという。
造り酒屋「梅美人」(796-0051 八幡浜市1557-2 0894-22-0312)では大正初期に作られた古い酒蔵や昭和初期の「看板様式」(外見は様式,中は和式)の母屋も見せていただいた。2階建ての母屋は贅を尽くした客間をそのまま保存している。八幡浜の近くに伊方(いかた)があり,日本最古の杜氏で,四国三大杜氏の「伊方杜氏」で有名だ。梅美人の杜氏も「伊方杜氏」とのことだ。もっとも一番若い杜氏が72歳とのこと(驚!)。酒を造る醸造技術から生まれた化粧水「つやつや美人」が評判とのことだった。「純米酒」1本購入。
Mさんは自家用車で駅まで送ってくれた。感謝。

タイトル 執筆者
ウィリアム・モリスとその時代――装飾芸術と環境保護―― 藤田治彦(大阪大学教授)
ステンドグラス -
モリスとステンドグラス 村岡靖泰(ステンドグラス作家)
テキスタイル -
栄養たっぷりの刺激――ステキな作品との出会い―― 箕輪直子(染織家)
壁紙 -
モリスのパターン・デザインと庭に咲く花 今井美樹京都造形芸術大学講師)
タイル・家具・ランプ・書籍 -
邂逅,そして一筋の糸――モリスと日本―― 林 望(作家)
ウィリアム・モリス年譜 猪谷 聡(大阪大学大学院)

ついでに積ん読していた,斎藤公江『モリスの愛した村――イギリス・コッツウォルズ紀行――』(晶文社,2005年4月,240ページ,本体価格1,900円)を読む(見た)。この本は,モリスの生涯とその芸術をたどる紀行エッセーだ。30分ほどの,たいへんきれいなDVD(英語の解説と日本語の字幕)も付いている。叙情的なDVDだが,モリスの芸術にたいする姿勢や背景を知るのにふさわしい作品だ。講義で上映したところ,受講生から好感をもって受けとめられたようだ。

モリスの愛した村?イギリス・コッツウォルズ紀行

モリスの愛した村?イギリス・コッツウォルズ紀行

モリスに関するウェブ上の情報はかなりあるようだ。2005年に更新が止まっているが,「英国田園地帯慢性中毒症患者の「NI」もしくは「黒顔羊」のウェブサイト」のモリスのコーナーには,生涯,作品,ゆかりの場所,ステンドグラスのある教会などの詳しい情報がある。