122中山和芳著『ミカドの外交儀礼――明治天皇の時代――』

書誌情報:朝日選書(814),291頁,本体価格1,300円,2007年1月25日

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「見えない天皇」から「見える天皇」へと変える天皇の「視覚化」については,先行する研究がある。本書は,(明治)天皇が外国人,ひいては諸外国にたいして,どのように「視覚化」されたのかを検討した書物だ。外交儀礼を正面に据えてこの「視覚化」を追跡したのは本書が初めてていうことになる。外国人の手記や宮廷記録をもとに,外国公使,外国王族,饗宴,宮中招宴などの接遇,皇后の役割などを詳細に論じ,日本の伝統の墨守と西欧化に直面した明治期天皇制を鮮やかに描いている。
明治天皇の外交儀礼をどのようにするかは,天皇制の在り方と深く結びついていたであろうことは容易に推測することができる。外交儀礼を客観的に叙述した冷静な筆致が印象的だ。
本エントリーで「島めぐりクルージング「忽那(くつな)西方4島をめぐる盛り沢山コース」(https://akamac.hatenablog.com/entry/20071008/1191829127)で触れたことがあるお雇い外国人リチャード・ブラントンが本書に出てくる(105-106ページ)。「日本の灯台・鉄橋や港湾・河川の改修に従事したイギリス人」(105ページ)とある。明治天皇と接見した時期が釣島に来た前か後なのかについてはここからはわからない。