081原稿料・印税収入がある人のための確定申告

確定申告の時期だ。今年は2月18日(月)から3月17日(月)までがその期間だ。

ネットからの電子申告(事前申請が必要)では最高5,000円の控除がある。

給与以外に原稿料・印税収入(以下原稿料等と略記)があれば雑所得になるが,そのうちの44%は必要経費とすることができる。われわれは納税の義務がある。それと同時に確定申告権もある。以下,末尾の参考文献をもとに原稿料等についての確定申告についてまとめてみた。
確定申告についての書籍やネット情報は数多くある。原稿料等については意外と盲点になっていて詳しく触れていないように思う。個別の相談には応じかねるが,間違いがあればご指摘ください。経験談やコメントなども大歓迎。
このネタは実は10数年前から経済学史学会のメーリング・リストなどで流してきたもので,知人の中村宗悦さんは古いブログで経験談を書いてくれている。
中村宗悦「大教室のMONOLOGUE」(2011年3月9日現在下記アーカイヴは見つからない)

また,非常勤講師の経験談もある。少し古いが下記を参照。

【大事な点】

  1. 原稿料・印税は雑所得になる。
  2. この雑所得の44%を必要経費とすることができる。
  3. 必要経費は収入金額まで認められる。

【具体例と留意事項】

  1. 原稿料収入が20万円だったとすると,まず雑所得の収入金額の欄に20万円と記入する。つぎに雑所得の必要経費の欄に赤で学術論文44%と明記して8万8千円と記入し,全体の税額を計算して申告する。
  2. 原稿料等の収入を得るために実際にかかった費用が44%以上ある場合には,44%にこだわらず,実際にかかった費用を全額(ただし,収入金額まで)控除できる。現在は実額申告が強調されており,普段から残しておいた領収書を利用し,経費を詳細に記入して提出する。確定申告する際には,実際には必要経費として50%以上かかっているが,面倒なので比較的簡易な44%を選んだことをよく説明すること。
  3. 税務署の窓口で相談すると44%が否定されることがある。税法上はあくまでも必要経費の実額を控除するのが建前になっていることとこの44%の通達が古いことによる。
    • 通達【直所5-5昭和32年3月1日「印税および原稿料の所得標準率の適用について」】によれば,通常は収入100円当たり30円の必要経費を引いた70円が所得になるが,原稿料等については70円の2割の14円をさらに必要経費として(30円+14円=44円)控除できることになる。ただし,44%が否定されても30%は実務上控除されていることに注意。この通達を知らない税務署担当者もおられるかもしれない。また,そんな古い通達は無効だと「暴言」をはく税務署担当者もいるやに聞いている。無効という通達がない以上この通達にしたがわざるをえないのは当然というべきと考える。
  4. 必要経費になるのは,たとえば以下。ひとによってことなる。
    • 原稿を書く際の紙代
    • コピー代
    • 文房具等
    • 研究・執筆のための図書や学会,研修会への参加費用
    • 研究・執筆のための材料費,旅費,宿泊費
    • 研究・執筆,情報処理のためのパソコンなど(取得価格が20万円未満のものは全額必要経費として算入でき,20万円以上のものは減価償却資産として耐用年数に応じた原価償却費を算入することができる。)
    • 外国への調査旅行(ただし,必要経費として算入されるか否かは,その目的,期間,旅行先,旅行経路等を総合勘案して判定される。日程表など必要経費として判定されるにたる資料をつけ,その間に観光などをした場合には,旅行期間等により按分し旅費を計算する。)

【参考文献】

    • 三木義一・松岡基子「科学者の印税等の必要経費は44%」(『日本の科学者』第28巻第2号,1993年2月)
    • 同「科学者の印税等の必要経費は44%」(『日本の科学者』第29巻第2号,1994年2月)
    • 同「科学者も確定申告権を行使しよう!」(『日本の科学者』第30巻第2号,1995年2月)