書誌情報:岩波新書(1544),ix+209頁,本体価格740円,2015年5月20日発行
- 作者:三木 義一
- 発売日: 2015/05/21
- メディア: 新書
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減税か増税かで一喜一憂することなく,税金を通して主権者意識を回復しひいては国と社会を変えようとの強いメッセージが込められていた。
日本人に納税義務意識が強いのは「明治憲法的発想の産物」(25ページ)であること,給与所得者の大半が申告納税制度であるにもかかわらず申告から遠ざけられたこと,事業所得者の申告納税制度は「納税者の協力により課税庁ののコストを軽減している制度」(35ページ)であること,日本の租税法律主義は「政府が徴税の便宜のために法の形式を用い,国民に義務を強いてきた面が強い」(107ページ)ことなどのように,納税者主権とは言い難い。
税制をよく知ることや税制決定過程に関与することで税のあり方に責任を持とうという主張は,納税者権利憲章の制定の提言や税制改革プロセスの透明化という具体的見通しに繋がっている。「私たちが議員を選び,私たちの税の拠出額を決めても,私たちが選んでもいない公務員がその使い道を決定し,議員もチェックできないのでは,私たちは何のために税金を負担しているのかわからない」(196ページ)。われわれの税金は格差拡大を是正し,民主主義の維持・発展に使われるべきなのだ。
税法の手続を扱うことで納税者主権論を展望した本書は義務意識からの解放を謳っていた。
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