書誌情報:藤原書店,314頁,本体価格3,600円,2007年12月30日
- 作者: ピエール・ブルデュー,丸山茂
- 出版社/メーカー: 藤原書店
- 発売日: 2007/12/01
- メディア: 単行本
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すでに20冊ちかく翻訳が出ている「ブルデュー・ライブラリー」(藤原書店)にまた1冊が加わった。
フランスの西南に位置し,ブルデューの故郷ピレネアトランティック県ベアルン地方のダンカン(本書では「レスキール)を舞台とした,聞き取り調査とデータによる男性独身者の存在を解明しようとした著作である。1960年代はじめに書かれた著者のキャリアの初期に属し,のちによく知られるようになった「ハビトゥス」,「戦略」,「象徴的支配」,「反省性」などの概念がすでに使われている。
イギリスほど強固ではない長子相続性と財産分与の平等性があいまって,家系の継続と家産の保護の必要から,結婚機会の増減と社会経済的地位が関係している。19世紀末から20世紀までの時期はとくに土地所有の有無と配分,さらには地理的分布と深く結びついている。次子の独身と相続放棄は社会システムが機能するための「正常なる異常」・「アノミー」なのだ。ハビトゥスにしたがいながら戦略的行動をする人間行動と個人・社会相互の規定関係による婚姻論は,近代ヨーロッパ社会を個人の自立と解放とだけ見ることはできない視点を提供しているように思う。
レトリックを駆使しない注のほうが意外と読みやすい。