書誌情報:岩波新書(1131),xii+202頁,本体価格700円,2008年4月22日
- 作者:池内 了
- 発売日: 2008/04/22
- メディア: 新書
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タイトルは紛らわしいが,疑似科学の手口とその弊害や影響を論じたもので,疑似科学への入門書ではない。占い,超能力・超科学,疑似宗教などを第一種疑似科学,科学を援用・乱用・誤用・悪用したものを第二種疑似科学,複雑系を第三種疑似科学とし,非合理をおもしろがる雰囲気や情報の非対称性を指摘している。未来予測が不完全である場合には安全サイドに立ってあらかじめ手を打つ「予防措置」を処方箋として提示し,わからないときがあったとき,未知のものにすがったり,一足飛びに解決したりしないことが疑似科学への対処のひとつと説く。
疑似科学にしろ,本書にしろ,100%信用するな(「すべてを疑え」とはマルクスの言葉だったが),ということだろう。そう,本書の主張も100%正しいと思わない読者が賢明な読者ということになる。
安斎育郎著『だまされない極意――私たちはどう生きればいいのか――』を取り上げた際,触れたように(https://akamac.hatenablog.com/entry/20070614/1181816244),血液型占いや心霊現象を素朴に信じている若者はかなり多い。安斎の本は疑似科学を信じる人は最初から手にとらない。その点,本書は疑似科学信奉者にも手にとってもらえるかもしれない。