207竹内正浩著『地図もウソをつく』

書誌情報:文春新書(651),198頁,本体価格750円,2008年8月20日発行

地図もウソをつく (文春新書)

地図もウソをつく (文春新書)

  • -

知り合いのドイツ人によると,ドイツ人が絵を描くとき,海を紙の上部に描くという。たしかにドイツは国土の北(上)に海がある。本書でも「我々は知らず知らずのうちに,身近な地図から,世界観や空間認識を形成している」(118ページ)と指摘している。本書は,意図せざるウソから意図したウソまで,地図に関するエピソードを取り上げている。日本は狭いと言われている。EU加盟国27国中,日本より面積が広いのは,フランス,スペイン,スウェーデンのわずか3カ国だけだ。
最近の世界地図の日付変更線は,中部南太平洋上の赤道付近で大きく東に張り出している。北半球と南半球,西半球と東半球のすべてにまたがる世界でただひとつの国家(キリバス共和国)の日付統一と関係がある。全中国に領域が及んでいる中華民国(台湾)の地図,精確な等高線の入った地図は皆無だという韓国と中国など,地図はいまなお国家間対立から自由ではないのだ。地図は「その国の真の自由度」(99ページ)をあらわしていよう。
国土地理院発行の地形図は1981(昭和56)年をピークに売れ行き不振とのこと。紙の地図は「紙々の黄昏」(194ページ)を迎えている。Google MapやEarthについても「暗雲」として触れてある。