1019川口マーン恵美著『住んでみたヨーロッパ 9勝1敗で日本の勝ち』

書誌情報:講談社+α新書(628-2 D),222頁,本体価格880円,2014年9月22日発行

  • -

泥棒(ヨーロッパ),運動神経(ドイツ),自然回帰(スカンジナビア),闘牛(スペイン),地下鉄建設(ケルン),食品偽装(ヨーロッパ),宗教(ドイツ),歴史認識(ヨーロッパ+アジア),奴隷制度の遺産(ヨーロッパ),オペラ(ドイツ),同性愛(ヨーロッパ),移民問題(主としてドイツ),EU,都市比較(ウィーン,パリ,フランクフルト)とヨーロッパ諸国での経験をもとに日本の良さを謳い上げていた。
前作「8勝2敗」からさらに神話の国・日本を「世界一の楽園」と呼ぶのはリップサービスすぎようが,見ているところは見ている。ノルウェー大自然を目の前にして「手つかずの自然を手つかずで残すためには,十分すぎるほど人間の手が掛かり,叡智が費やされている」(49ページ)と喝破している。また,ドイツでは19世紀初めから各州が「賠償金」を協会に支払い,教会に属している信者が所得税の9パーセントを教会税として支払っている。EUの移民・難民対策の矛盾点の指摘もなるほどだ。
南京「大虐殺」と慰安婦「問題」はなかったと読める個所と安倍首相の靖国参拝肯定は著者らしい鋭さがない。
同性愛者を英雄視するなという正論ながら異性愛に最高の価値を置く理解は評者には届かなかった。「むくつけき中年男二人と幼い女の子からなる三人家族」(175ページ)は「普通」ではないかもしれないが,認めようじゃないかというのが共通の考えだろう。
大和撫子」の次作は「10戦10勝で日本の勝ち」に決まった。