書誌情報:平凡社新書(967),355頁,本体価格1,000円,2021年2月15日発行
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東アジアの一角にあったかつての傀儡国家・満州国を対象に,著者による「総合文化史の概説」(51ページ)は細やかだ。モダニズム私人たちの歩み,「満州国」の公用語と国語,中国語新聞の盛衰,ハルビンについての日本語の読み物,満州の映画上映状況と文芸,大東亜文学者大会など文化史による満州国の諸相を詳述している。
満州国は,満蒙領有論による関東軍の行動によって国家意志が「引きずられて決着」(43ページ)したとする理解をもとに,満州国をして,「日本帝国主義が指揮権の下に置いて,タテマエ上は独立国家として経営した唯一の政権であり,地域」(50ページ),「20世紀型の国家社会主義」(140〜141ページ),「専制でも立憲君主制でもない,類例のない一種の傀儡国家」(175〜176ページ)などと何度か確認する。
さらに,関東軍の場当たり的で冒険主義に大日本帝国の外交と軍のあいだの亀裂の原型を見いだし,挙国一致の内実すら作ることができなかったと,大日本帝国史に再定置している。新書としては破格の内容が詰め込まれていた。
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