277ロジェ=アンリ・ゲラン/ジュリア・セルゴ著(加藤雅郁訳・高遠弘美解説)『ビデの文化史』

書誌情報:作品社,329頁,本体価格2,600円,2007年9月10日発行

ビデの文化史

ビデの文化史

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「秘蔵図版100点満載」(帯の惹句)とあれば,見ないわけにはいくまい。ビデはルイ15世時代の高級家具として製作され,ベレー帽,フランスパンとともに「フランスの三大発明」だそうだ。ミラボーはケネー「経済表」を,文字,貨幣とともに「人類の三大発明」とよんだ。ケネーはルイ15世の愛人ポンパドゥール夫人の庇護下にあったから,ルイ15世治下でビデとケネー「経済表」という傑作が生まれたことになる。
ビデとセックスあるいは避妊との関係,さらには人間の秘所の衛生にまつわる歴史が,『トイレの文化史』(筑摩書房,大矢訳,1987年,isbn:9784480853813ちくま学芸文庫版,isbn:9784480082398)や『自由・平等・清潔――入浴の社会史』(河出書房新社,鹿島訳,1992年,isbn:9784309241302)の著者らによって詳しく説明されている。
フランス製ビデがかつてはブランドだったが,現在は生産・普及とも世界一はイタリア製。秋葉原ではウォッシュレットを買う外国人が多いとのこと。日本でもウォッシュレットによってビデも急速に股間いや巷間に流布した(これは訳者から借用)。人間の生活に不可欠な道具がこうした歴史を持っているとは。著者たちによる浩瀚な本書の公刊に好感をもつのは好漢な評者だけではないだろう(ちょっとやりすぎか)。