485守如子著『女はポルノを読む――女性の性欲とフェミニズム――』

書誌情報:青弓社ライブラリー(64),246頁,本体価格1,600円,2010年2月20日発行

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男はポルノを読む。女「も」読むではない。男がどうであれ,女「は」ポルノを読む。ポルノが性差別と批判することだけからはなにも生まれない。ポルノには性差別以外の側面もあり,女の性的欲望を視野に入れたらどうなるか。タイトルの「は」にはこんな問題意識が込められている。
世に氾濫する多くのポルノは,レイプを代表とする男の女への強制力を描いていること,さらに女だけを性的存在として描いており,ポルノ=暴力的・差別的な性意識を不断に生み出している。ところが1990年代には女の性的欲望を喚起するレディコミや「ヤオイボーイズラブ)」が出現する。著者はこれを「女性向けでは初のポルノのジャンル」(71ページ)と評価する。漫画の登場人物の音声化されない心情をコマの内部に書き込む手法や登場人物の視点を読者に開示する一人称の物語形式,行為による受動性を動機・結果の解釈によって心情の能動性に転化させる構造などと女用ポルノを解読し,ポルノを女用マスターベーション・ファンタジーと読み換える。
ポルノに型通りの解釈を加えることから,攻める女の性描写,同意の描写,脱暴力の仕掛けを積極的に読み取り,女の性的主体性を見る試みであり,新たなフェミニスト・ポルノ論の宣言である。
女はポルノを読む。女はマスターベーションをする。自分のセクシュアリティーを受容しつつ書き上げた快著といっていい。