504角川歴彦著(片方善治監修)『クラウド時代と〈クール革命〉』

書誌情報:角川oneテーマ21(A-112),214頁,本体価格705円,2010年3月10日発行

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情報産業のトップによる現状理解とこれからの見通しを知る好著だ。角川グループとしてユーチューブの公認を契機に,「大衆の「集合知」」やツイッター,さらには〈クール革命〉の確信へ続いていく。本書の主題〈クール革命〉とは「高度な IT 化が進むなか,社会のさまざまな場面で大衆が参加し,大衆の嗜好や意思が社会を動かす機会が増えている」(89ページ)ことを指す。ここかしこで聞かれるようになった「モジュール型」やハードよりソフト重視の経営手法の評価がこれに重なっている。
いまひとつは,国家プロジェクトとしてのクラウド革命の推進である。クラウド環境が無いとコンピュータを使えない時代が到来するという見通しと IT 安全保障上の観点から,情報インフラ,ネットワークサービス,プラットフォーム,コンテンツからなる自前の情報ネットワーク社会――「東雲(しののめ)」プロジェクト――の構築の提言だ。
音楽と本,さらには映画も新しい潮流にのまれ,クラウド時代の雌雄を決する時期はあと数年先の2014年。「無限の知識の網が民主主義で彩色される希望」(72〜3ページ)を持つ著者の〈クール革命〉論は意外にホットだ。
「情報植民地化の危機に立つ「月並みの国」」(184ページ」とあり,他方では「日本はアメリカの「情報植民地」下にある」(186ページ)ともある。「化」と「下」では「か」なり違う。たぶん見出しのほうの「化」が間違いなのだろう。グーグルと NASA との提携を「グーグルが軍事国家アメリカの戦略計画に組み込まれた」(187ページ)とクールな見方も披露している。