書誌情報:岩波新書(1508),口絵6+ix+233+9頁,本体価格880円,2014年10月21日発行
- 作者:松長 有慶
- 発売日: 2014/10/22
- メディア: 新書
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開創1200年を迎えた高野山の歴史と文化を丸ごと扱っていた。開創した弘法大師・空海は讃岐生まれであり,満濃池の修築や四国八十八箇所霊場と四国に縁がある。この四月には愛媛大学に「四国遍路・世界の巡礼研究センター」という国内唯一の遍路専門の研究拠点ができた。
本書は弘法大師・空海その人については一章を割きながら真言密教の思想と結びつく高野山における儀礼,歴史,文化財に詳しく触れている。
高野山が今に残る経済的基盤については,勧進という独自の募金制度,寺領収入,幕府からの扶持米などにも言及がある。中世は「寺領経済」(165ページ),近世は「宿坊経済」(同)とし,織豊政権・徳川幕府の基本政策は「仏教教団のもつ経済力と僧兵などの武力を徹底して排除し,その財を権力者の何らかの意図をもって教団に分与し,それを餌にして宗教統制を行う」(164ページ)と端的にまとめていた。
「入定留身」(弘法大師は高野山奥之院に今なお身を留めて入定しているという信仰)は弘法大師にかぎられることや真言密教が都塵を避け大自然との融合を切望したことなども評者にとっては新しい発見だった。
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