621中川栄治著『「アダム・スミス価値尺度論」欧米文献の分析――基本的諸問題を巡って――』(上)

書誌情報:晃洋書房,vii+617頁,本体価格8,800円,2010年2月28日

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スミス価値尺度論に関連する欧米文献を時系列に扱い、19世紀末から1970年代末の展開を跡づけている。価値尺度論という特定のテーマでこれほど包括的に纏めた著作は例がない。70欧米文献にもおよぶ網羅性と多様性の提示に価値尺度論の展開をリカードウあるいはマルクスの系譜でのみ見るべきではないという問題意識を感じる(マルクスの所説を『剰余価値学説史』で代表させるとすれば理論史分析としては十分ではない)。
欧米価値尺度論研究展開の追体験は価値尺度論の正確な理解や新しい論点摘出を生み出すのか。価値尺度論史として成功しているのかどうかは第2部にあたる下巻に待つほかない。まずは研究史の網羅性に本書の意義を見いだしておきたい。