1255井上恭介著『牛肉資本主義――牛丼が食べられなくなる日――』

書誌情報:プレジデント社,231頁,本体価格1,500円,2015年12月19日発行

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リーマンショック後起こった中国で始まった牛肉を食らう「異次元爆食」によって飼料用穀物の需要急増の過程を追っていた。牛肉消費が高まり,羊から儲かる牛への転換が進む。また,大豆粕が重要な飼料となる大豆も小麦も需要が急増する。そうした連鎖は儲かるところに群がるグローバル資本主義のあらわれにすぎない。
工業製品化した牛肉の世界は食料輸入大国日本に大きな影響を与えつつある。ショートプレートによって安く仕入れることによって可能だった牛丼が食えなくなるのは遠いことではない。サブタイトルはそれを語っていた。
里山/里海(SATOYAMA/SATOUMIとして定着しつつある)が牛肉資本主義を止める方策になる。世界大の牛肉消費に対するにあまりにも小さい対案であり,像と蟻との対比に近い,非現実的だとは思わない。遺伝子操作の大豆を食べさせぶよぶよと太らせる柔らかく脂肪が多い肉に未来があるわけがない。自然放牧の硬い肉にこそ牛肉資本主義の先にある。
それにしてもやたら体言止めが多い本だった。