豊川浩一「大黒屋光太夫自筆の署名文書――18世紀日露関係文書の検討――」(『駿台史学』第163号,2018年3月)を目にした。
吉村昭著『大黒屋光太夫』(新潮文庫,2005年5月,上[isbn:9784101117478]・下[isbn:9784101117485])と井上靖著『おろしや国酔夢譚』(文春文庫,1974年4月,[isbn:9784167902087])で知っている大黒屋光太夫(1751-1828)に関する文書がサンクト・ペテルブルク歴史研究所蔵「ヴォロンツォーフ家文書」にあったことを紹介していた。「日本人に関するA. A. ベズボロートコ伯爵宛計画,すなわち様々な書簡」の表題の文書群に,14種類の手紙,説明,日本人への下賜品一覧があり,そのなかの1791年9月21日付ラクスマンおよび日本人の受け取った下賜品目録に,大黒屋光太夫自筆のロシア語と日本語署名の文書があるという。エカチュリーナ二世から帰国に際して下賜された金貨150枚,金メダル,金鎖のついた金時計の受取証である。
『北槎聞略』(岩波文庫,1990年10月,[isbn:9784003345610])では印を押したと書いてあるので,この文書は下書きで,ロシア滞在中のロシア語と日本語を併記した自筆署名はこの文書が初めてではないかと著者は推測している。
末尾に「大日本ニ而伊勢国白子/大黒屋光太夫」(縦書)と署名した文書の写真がそえられている。
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