016逸村裕・竹内比呂也編『変わりゆく大学図書館』

書誌情報:勁草書房,ix+232頁,本体価格2,900円,2005年7月20日

変わりゆく大学図書館

変わりゆく大学図書館

初出:コンピュータ利用教育協議会『コンピュータ&エデュケーション』第19号,東京電機大学出版局,2005年12月1日

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大学図書館は時代とともに,その機能を変えてきた。1970年代までは「紙の図書館」が主流の時代,80年代は「機械化図書館」の本格化とネットワーク構築時代,90年代は「電子図書館」に向けた準備時代,そして2000年代は「電子図書館」の充実時代。大学図書館はいま「電子図書館」時代の真っ只中にあり,新しい機能やサービス,マネジメント機能の整理が欠かせない。
本書は,図書館や出版の現場で働いている方や図書館員としての経験を持つ教員の執筆による。総論にあたる「今日の大学図書館のあり方」(第I部),「電子図書館」時代の各種サービスやメディアについて詳しく論じた「新しい機能とサービス」(第II部),図書館のマネジメントにかかわるトピックを取り上げた「サービスを支えるマネジメント」(第III部)は,大学図書館の現状と今後の大学図書館の発展を展望する格好の資料となっている。すくなくとも大学図書館はいまどのような位置にあるのかは本書を繙けば了解できるであろう。
私見によれば,大学図書館はふたつの機能の接点にある。ひとつは大学図書館であることによる各大学構成員へのサービス,いまひとつは大学を超えたサービス提供である。「電子図書館」時代は大学の枠を超えた機能の充実を要請していると思われるのだが,本書はやや総論的という印象をもった(これについては主として本書第13章「図書館コンソーシアム」で扱われている)。
また,ライブラリアンとしての専門家養成システムや処遇,研究者との連携も,アウトソーシングの波(第14章)があればこそ積極的に論じられる必要があろう。先日国際学会で同席したイギリスのある博物館のライブライアンの名刺には「Dr」の文字が刻まれていた。