017前川恒雄・石井敦著『新版 図書館の発見』

書誌情報:日本放送出版協会NHKブックス1050),237頁,本体価格920円,2006年1月30日

新版 図書館の発見 (NHKブックス)

新版 図書館の発見 (NHKブックス)

初出:コンピュータ利用教育協議会『コンピュータ&エデュケーション』第20号,東京電機大学出版局,2006年6月1日

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本書は,旧版(1973年)を全面改稿したもの。ここでの図書館とは分館を含めて全国に2,825館(2004年)ある公共図書館であって,大学附属図書館は含まれていない。図書館の機能(「第二章 図書館は何をするところか」,「第三章 本はどのように選ばれるか」,「第四章 図書館は建物ではない」,「第五章 なぜ司書か」),歴史(「第六章 図書館の歩み」)そして問題点(「第一章 現代の図書館」および「第七章 これからの図書館)がコンパクトに叙述されている。
本書は,公共図書館をめぐる厳しい状況を背景にしている。「やむにやまれぬ気持ち」(「まえがき」)と表現しているように,国と自治体の財政逼迫による図書館経費と人員削減,図書館業務の民間委託などが公共図書館を根底から揺るがしているからである。この意味で,本書の出版は図書館業務に従事している人のみならず広く図書館に興味を持っている人にとって有益な基礎的知識を提供している。
本書は公共図書館の役割を主として図書(書籍とも本とも表現している)においている。「図書館の資料で最も重要であり,また最も市民から求められているのは本である」(209頁)。岐路にある公共図書館であるからこそ,あらためて読書の意味を確認し,図書館の役割を主張するところはまさに正論といえるだろう。
本書には,大学附属図書館との連携や共同事業の展開の叙述はほとんどない。図書費等の削減に対するに読書の意義と図書館の役割を対峙することだけからは,公共図書館の未来は出てこない。