愛媛県美術館の「サンクトベテルベルク 国立ロシア美術館展」に行ってきた。国立ロシア美術館は,1898年,ニコライ2世のとき,サンクトベテルベルクのミハイロフスキー宮殿にロシア初の国立美術館として誕生した。10世紀から現代までの約40万点のロシア美術のコレクションがある。
今回の展示は,18世紀後半から20世紀初めまでの絵画86点,彫刻など25点,あわせて全101点の展示である。ロシア革命前の皇帝はじめ上流階級のみならず貧困にあえぐ農民(農奴),自然を直視した風景画は,旧体制下のロシアをそのまま映している。
ドミトリー・レヴィツキー「エカテリーナ2世の肖像」(1790年代後期〜1800年代初頭)を見ては大黒屋光太夫を,イリヤ・レーピン「ニコライ2世とアレクサンドラ・フョードロヴナの結婚式」(1894年)と同「ニコライ2世の肖像」(1896年)を見てはロシア革命を,それぞれ連想してしまう。レーピンはリムスキー=コルサコフの肖像も描いていた(1893年)。
フィルス・ジュラヴリョフ「物乞いをする子どもたち」(1860年代),ヴァシーリー・ペロフ「墓地の孤児たち」(1864年),アルクセイ・サヴラーソフ「冬」(1860年代),ピョートル・スホデリスキー「村の昼間」(1864年),イヴァン・クラムスコイ【図録の表紙「ソフィア・クラムスカヤの肖像」の作者】「虐げられたユダヤの少年」(1874年),イリヤ・レーピン「何という広がりだ!」(1903年),フョードル・ヴァシーリエフ「雨上がりの田舎道」(1869年),ヴァシーリー・マクシモフ「盲目の主人」(1884年),ヴァシーリー・ポレーノフ「モスクワの庭」(1902年)など19世紀後半からの「リアリズムの時代」の絵画には圧倒された。
この展示にあわせて,収蔵品による松山出身の画家・柳瀬正夢らの小展示もあった。昭和初期の『戦旗』のポスターなどすでに見たものだったが,特別展とともに収蔵品と地元出身の画家のアピールと読めようか。
この展示は巡回展であり,終了したのも含めて以下のようだ。
- 2007年4月28日〜7月8日:東京都美術館
- 2007年8月25日〜9月24日:金沢21世紀美術館
- 2007年10月3日〜11月11日:愛媛県美術館
- 2007年11月20日〜2008年1月14日:サントリーミュージアム「天保山」
- 2008年1月24日〜3月23日:東京富士美術館
タイトル | 執筆者 |
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18世紀から20世紀初めまでのロシア美術 | エヴゲニア・ペトロヴァ(国立ロシア美術館副館長) |
美と真実の調和をもとめて——レーピン絵画への招待 | 五木田 聡(東京富士美術館副館長) |
ロシア芸術の軌跡——19世紀のリアリズムとその<広がり>について | 沼野 充義(東京大学教授) |
I 古典主義の時代 18世紀後半 | |
II ロマン主義の時代 19世紀前半 | |
III リアリズム時代 19世紀後半 | |
IV 転換期の時代 20世紀初頭 | |
国立ロシア美術館 | |
サンクトペテルブルク中心部地図 | |
ロシア帝国西部地図 | |
ロシア文化の特徴 | 藤沼 貴(早稲田大学名誉教授) |
レーピンの主要作品 | 五木田 聡 |
ロシア絵画史 関連年表 | |
出品作品リスト |