005国立ロシア美術館展および図録

愛媛県美術館の「サンクトベテルベルク 国立ロシア美術館展」に行ってきた。国立ロシア美術館は,1898年,ニコライ2世のとき,サンクトベテルベルクのミハイロフスキー宮殿にロシア初の国立美術館として誕生した。10世紀から現代までの約40万点のロシア美術のコレクションがある。
今回の展示は,18世紀後半から20世紀初めまでの絵画86点,彫刻など25点,あわせて全101点の展示である。ロシア革命前の皇帝はじめ上流階級のみならず貧困にあえぐ農民(農奴),自然を直視した風景画は,旧体制下のロシアをそのまま映している。
ドミトリー・レヴィツキー「エカテリーナ2世の肖像」(1790年代後期〜1800年代初頭)を見ては大黒屋光太夫を,イリヤ・レーピン「ニコライ2世とアレクサンドラ・フョードロヴナの結婚式」(1894年)と同「ニコライ2世の肖像」(1896年)を見てはロシア革命を,それぞれ連想してしまう。レーピンはリムスキー=コルサコフの肖像も描いていた(1893年)。
フィルス・ジュラヴリョフ「物乞いをする子どもたち」(1860年代),ヴァシーリー・ペロフ「墓地の孤児たち」(1864年),アルクセイ・サヴラーソフ「冬」(1860年代),ピョートル・スホデリスキー「村の昼間」(1864年),イヴァン・クラムスコイ【図録の表紙「ソフィア・クラムスカヤの肖像」の作者】「虐げられたユダヤの少年」(1874年),イリヤ・レーピン「何という広がりだ!」(1903年),フョードル・ヴァシーリエフ「雨上がりの田舎道」(1869年),ヴァシーリー・マクシモフ「盲目の主人」(1884年),ヴァシーリー・ポレーノフ「モスクワの庭」(1902年)など19世紀後半からの「リアリズムの時代」の絵画には圧倒された。
この展示にあわせて,収蔵品による松山出身の画家・柳瀬正夢らの小展示もあった。昭和初期の『戦旗』のポスターなどすでに見たものだったが,特別展とともに収蔵品と地元出身の画家のアピールと読めようか。
この展示は巡回展であり,終了したのも含めて以下のようだ。


図録は英語の作者と作品リストもあり,丁寧に作られている。

タイトル 執筆者
18世紀から20世紀初めまでのロシア美術 エヴゲニア・ペトロヴァ(国立ロシア美術館副館長)
美と真実の調和をもとめて——レーピン絵画への招待 五木田 聡(東京富士美術館副館長)
ロシア芸術の軌跡——19世紀のリアリズムとその<広がり>について 沼野 充義(東京大学教授)
I 古典主義の時代 18世紀後半
II ロマン主義の時代 19世紀前半
III リアリズム時代 19世紀後半
IV 転換期の時代 20世紀初頭
国立ロシア美術館
サンクトペテルブルク中心部地図
ロシア帝国西部地図
ロシア文化の特徴 藤沼 貴(早稲田大学名誉教授)
レーピンの主要作品 五木田 聡
ロシア絵画史 関連年表
出品作品リスト