書誌情報:吉川弘文館(歴史文化ライブラリー238),6+207頁,本体価格1,700円,2007年9月1日
- 作者: 天沼香
- 出版社/メーカー: 吉川弘文館
- 発売日: 2007/08
- メディア: 単行本
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1947年から49年生まれを「団塊世代」と名付けたのは堺屋太一だったが,堺屋はじめ世にはびこる団塊世代論はあたっていないとするのが本書の主張だ。団塊世代の著者による「団塊世代論」批判を試みた書物。
団塊世代は体制にたいしてきわめて従順(堺屋),国家や党など権威に寄りすがる腰抜け・思考停止に陥る輩・利他のふりをしたエゴイスト(宮台真司),なにかと問題を引き起こす世代(市川孝一)などの批判は,世代間戦争をあおるだけで,いびつな人口構成を招来した戦前・戦中の指導者の責任や現代政治の貧困さをみていない。なにかと団塊世代そのものに問題があるかのような議論が多いだけに,この論点は正しい。
高度経済成長を支えたのは団塊世代だという説にたいして,その時期の大卒団塊世代はまだ駆け出しであり,あえていえば中高卒の団塊世代が底支えしたとするのもあたっている。
大学進学率がようやく30パーセントを超える時代にあって,団塊世代の多数派は中高卒者である。彼らが「世代を超えた一般的・普遍的な生活者」(62ページ)として捨象するだけでなく,著者が設定する「典型的な団塊世代」(同)=大卒者との複合にこそ団塊世代の特徴がある。団塊世代論の批判の意図は理解できる。だが,批判すべき団塊世代論にからめ捕られている。