166ジョナサン・ハー著(田中靖訳)『消えたカラバッジョ』

書誌情報:岩波書店,303頁,本体価格2,200円,2007年12月12日

消えたカラヴァッジョ

消えたカラヴァッジョ

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17世紀の絵が,400年後アイルランドの教会で見つかった。カラバッジョの「キリストの捕縛」(ダブリン版)がそれだ。さらに,今世紀になって,ダブリン版より一回り大きい真性の本物とする絵(サンニーニ版)が見つかり,双方の真贋論がたたかわされるようになる。さて,結末は?
アメリカ人の手になるこのノンフィクション作品のなかには,「ましな教育方針ひとつなく,学生たちをリードするだけの指導教官やカウンセラーすらも提供できない」ローマ大学評(カイロ大学についで世界で2番目の大きさだそうだ),「果物をむく少年」の顧客である日本人富豪,500年前の文書が保存される,いい加減な国イタリアの描写,修復に欠かせない和紙の存在など小道具もそろっている。