書誌情報:東京大学出版会,iii+235頁,本体価格2,800円,2007年3月5日発行
- 作者: 春日直樹
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2007/03/01
- メディア: 単行本
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21世紀初頭の世界をポスト近代とし,市場化と自己規律化を特徴としているとする。これらはマルクスに代表される「解放の言説」とウェーバーに代表される「規律化の言説」に対応する。<遅れ>の問題とは,理念(=認識)に対する現実(=経験)のそれと経験に対する認識のそれとがあり,市場化と自己規律化の奥底で進行する事態だ。
欧米や日本とフィールドワークの舞台であるフィジーにおける<遅れ>の様相を見ることで理念と現実とのズレを確認する。このズレがつねに「問題-解決」の処方箋を要請するというのだ。著者の問題設定がデリダの差延やドゥルーズの時間イメージに関連し,混沌とする現代との格闘であることはわかった。著者の言う<遅れ>論に評者の理解が<遅れ>ていることだけは確かだ。