239安達正勝著『物語 フランス革命――バスチーユ陥落からナポレオン戴冠まで――』

書誌情報:中公新書(1963),xiii+342頁,本体価格920円,2008年9月25日

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著者のフランス革命関連本は何冊か読んだことがある。本書はフランス革命の大筋とエピソードを交え,ルイ16世再評価やフランス革命の陰にも触れた入門書である。
バスチーユ襲撃を始点とする革命の本格的幕開けから,ジャコバン革命政府の時代,恐怖政治,革命の反動化,革命の終息,ナポレオン一世の皇帝戴冠式を終点とする革命の最後的終焉までのほぼ15年間を扱っている。
「自由,平等,友愛」という啓蒙期の思想を軸に展開しているのは,思想が革命を準備したことでは間違いない。なぜ,「自由,平等,友愛」がスローガンになりえたのかが絶対王政ブルジョア,農民との対立のなかで浮き彫りになれば,ブルジョア革命としてのフランス革命の性格やスローガンの含意がより鮮明になったであろう。
「自由」とは,ブルジョアジーが商取引・生産の自由,労働力確保のための移住・職業の自由を主張するためであり,「平等」は,封建的諸特権の廃止を主張するものであっただろう。また,「友愛」は,人口の多数を占める農民をブルジョア側に引き入れるための主張であり,反王政・反封建で一致するからであっただろう。
ChangeやYes you canと同様,スローガンが実生活のなにかと結びついたとき,大きなうねりになったのだ。