104メリーランド大学所蔵プランゲ文庫

愛媛大学法文学部主催の講演会があった。坂口英子(メリーランド大学図書館東アジア資料室プランゲ文庫室長)「占領期の郷土資料――米国メリーランド大学所蔵プランゲ文庫から――」である。
プランゲ文庫は,1945年から1949年までに日本で出版された印刷物(図書,雑誌,新聞,映画,演劇,放送番組,ミニコミ誌,郵便,電報など)のほか電話の盗聴文書なども含んでいる。連合軍総司令部GHQ/SCAP)の民間検閲局(CCD)に保管されていた資料である。プランゲ(Gordon William Prange, 1910-1980)は海軍士官として軍務につき,GHQ/SCAPの参謀第2部(G-2)の修史官としてマッカーサーのための戦史の編纂作業にあたった。G-2部長ウィロビーとメリーランド大学学長バードを説得し,メリーランド大学に移管したのがプランゲ文庫である。
プランゲ文庫は占領期日本研究のための資料の宝庫であり,専門外の評者にも何度か目にした文庫だった。プランゲ文庫と国立国会図書館の共同事業として雑誌については目録作業とマイクロフィルム化が完了し,1997年4月からはすべての資料が公開されている。新聞・通信についてはメリーランド大学独自のプロジェクトで作成されたマイクロフィルムがあり,国会図書館で購入している(2003年2月からすべて公開)。また,図書については両館の共同事業として児童書のマイクロフィルム化が進行中である(2006年10月から「国際子ども図書館」で順次公開)。
同僚のT教授が初期のマイクロフィルム化共同プロジェクトに参画したという縁があり,今回の講演を開くことができた。評者は学部ゼミのため冒頭の挨拶だけで中座せざるをえなかったが,会の前の雑談といただいた資料から知ったことだけでも収穫だ。
愛媛県関係のものとしては以下の紹介があった。
・松山経済専門学校商経研究『愛媛経済概観』(検閲処分)HC-9005
・坂本不二男『捕虜日記抄』(書き込みあり)D-0617
愛媛県職員組合文化部『文集』430-0035
愛媛県職員組合『夏の生活』311-0014
・村上節太郎『愛媛県:私たちの郷土』542-41
・西原温一郎『農村共産化の危機』HD-0398
・小崎健次郎『家庭と子供の幸福』HQ-0264
・雄新中学校『文集:落成記念号』430-0043
・安河内泰『自由について』/原田光三郎『民法に於ける婦人の地位』1946 JC-0161