728坂本光司著『日本でいちばん大切にしたい会社3』

書誌情報:あさ出版,257頁,本体価格1,400円,2011年12月19日発行

日本でいちばん大切にしたい会社3

日本でいちばん大切にしたい会社3

  • 作者:坂本 光司
  • 発売日: 2011/12/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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本シリーズを読むようになったのは社会人院生の修論指導にかかわってからである。障がい者雇用の事例として日本理化学工業を知ったのはその時だった――当時の鳩山首相が感動し,訪問して所信表明演説で紹介したことは知らなかった――。しかも,日本理化学工業の主要商品はダストレスチョークである。大学で日本理化学工業のチョークを使っているかどうか調べたら残念なことにまだ使っていない。在庫がなくなったら日本理化学工業のチョークを使ってくれるとのことだった。
「私たちができない,やれない正しいことをしている人々がいたならば,私たちがやるべきことは,その人々を支援することです。/その人々に降りかかってくる熱い火の粉を,振り払ってあげることです。私たちは,決して傍観者であってはならないのです」(本書,164ページ)。大学でダストレスチョークを使うことはこの言葉のささやかな実践となると意を強くした。
最初のシリーズ([isbn:9784860632489])では,日本理化学工業,伊藤食品工業,中村ブレイス,柳月,杉山フルーツ,第2のシリーズ([isbn:9784860633738])では,富士メガネ亀田総合病院,埼玉種畜牧場サイボクハム,アールエフ,樹研工業,未来工業,ネッツトヨタ南国,沖縄教育出版の紹介があった。第3のシリーズの本書には,徳武産業,中央タクシー,日本レーザー,ラグーナ出版,大谷,島根電工,清月記の7社である。ハッピーおがわ(広島・呉)とダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン(東京)には本文中で触れている。
高齢者向けの靴を作りつづける徳武産業(香川県さぬき市)(→http://www.tokutake.co.jp/),地元密着で「お客さまが先,利益は後」の中央タクシー(長野市)(→http://www.chuotaxi.co.jp/),MEBO (Management Employee BuyOut:経営者と従業員が参加する会社買収)で親会社から独立した日本レーザー(新宿区)(→http://www.japanlaser.co.jp/),精神障がい者の雇用を実践しながら出版活動をしているラグーナ出版(鹿児島市)(→http://www.lagunapublishing.co.jp/),障がい者雇用に力を注ぎながら日本でいちばん大きなはんこ屋さんの大谷(新潟市)(→http://www.p-otani.co.jp/index.htm),件名工事から諸口工事に転換し「おたすけ隊」の島根電工(松江市)(→http://www.sdgr.co.jp/),「ノーと言わない究極のサービス」を目指し東日本大震災では仮埋葬・掘り起こしをした葬儀社・清月記(仙台市)(→http://www.seigetsuki.co.jp/)。いずれも感動と涙の物語が紡がれている。
「日本でいちばん大切にしたい会社」の表彰制度を作ったことを紹介している。過去5年以上にわたって,以下に該当していることが条件だ。①人員整理,会社都合による解雇をしていないこと,②下請け企業,仕入先企業へのコストダウンを強制していないこと,③障がい者雇用率が1.8%以上,④黒字経営(経常利益)であること,⑤重大な労働災害がないこと。
著者が紹介したい会社は600社を超えるそうだ。「人を大切にする経営」は着実に根付いている。