878日本経済新聞社編『世界を変えた経済学の名著』

書誌情報:日経ビジネス人文庫(に1-42),311頁,本体価格800円,2013年5月1日発行

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日本経済新聞「経済教室:やさしい経済学――名著と現代――」のシリーズ(2007年1月から8月)の単行本『経済学 名著と現代』(日本経済新聞出版社,2007年12月,isbn:9784532352899)を文庫にしたもの。このシリーズは愛読し,講義でも使わせてもらった。
文明論の視点――福沢諭吉文明論之概略』(北岡伸一),F・ブローデル『地中海』(川勝平太),J・R・ヒックス『経済史の理論』(宮本又郎),J・K・ガルブレイス『ゆたかな社会』(佐和隆光)――,思想の広がり(F・ハイエク『自由の条件』(竹森俊平),A・トクヴィルアメリカのデモクラシー』(猪木武徳),M・ウェーバープロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(岡崎哲二),D・ヒューム『人性論』(松井彰彦),T・R・マルサス人口論』(斎藤修),J・S・ミル『自由論』(杉原薫)――,経済理論の発展――アダム・スミス国富論』『道徳感情論』(堂目卓生),A・マーシャル『経済学原理』(林敏彦),J・M・ケインズ雇用・利子および貨幣の一般理論』(小野善康),J・A・シュンペーター『経済発展の理論』(今井賢一),ブキャナン,タロック『公共選択の理論』(土居丈朗),ゲイリー・ベッカー『人的資本』(清家篤)――,経営学の深化――ピーター・ドラッカー『断絶の時代』(伊藤邦雄),H・サイモン『経営行動』(野中郁治郎)――と名著を通じて「先人の智慧」を探ろうとの趣旨だ。
それぞれ当代の思想界に大きな衝撃を与えた著作を解読する試みは執筆者の現代的関心の有り様を反映しており,著作刊行にいたる理論形成への叙述の濃淡もある。経済学理論史というより経済学の著作(うえに紹介したように経済学書だけではないが)をピックアップした一巻完結型である。興味のある著者と著作から拾い読みすればいい。経済学をさらに学ぶための入門書としてうってつけの文庫である。