書誌情報:岩波新書(1459),x+206+3頁,本体価格720円,2013年11月20日発行
- 作者:稲葉 剛
- 発売日: 2013/11/21
- メディア: 新書
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生活保護法改正案と生活困窮者自立支援法案は成立した。生活保護申請の現場からこの二法の廃案を主張してきた著者の思いは残念ながら届かなかった。生活保護をどう考えるかという問題をあるべき論からではなく現場から見据えている。それゆえ二法成立後でも読む意味があると思う。
生活保護法改正案の根拠の薄弱性,窓口での「水際作戦」,家族や地域の絆を強調する「絆原理主義」など生活保護法改正の問題点は説得的だった。「現在の日本の貧困対策の最大の問題点は,生活保護の手前の段階でのセーフティネットが不充分であるために,最後のセーフティネットであるはずの生活保護が「最初で最後のセーフティネット」になってしまっている点にある」(189ページ)と生活保護制度の持つ意味は大きい。
また,今回の生活保護の見直し論が社会保障制度全体の見直しへと波及することも見通している。制度や利用者の実態については本書が詳しいし,生活保護バッシングの背景になっている労働環境の劣悪さへの視点も暖かい。生活保護は受けるものではなく(本書では「受給」ではなく「利用」としている),権利である。「それ(生活保護制度:引用者注)は人間の「生」を無条件で保障し,肯定するということ」(203ページ)だ。
生活保護を考える好著であるのはまちがいないが,財源論に言及することなしには完結しない。
「この本はそうした(生活保護に対するマイナスイメージ:引用者注)社会や政治の「流れに棹さす」ことを目的」(ivページ)となると,本書の趣旨と逆になる。
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