文部科学省大臣官房文教施設企画部施設企画課編の資料集が公開されている(→http://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/shuppan/1344756.htm)。「国立大学等が最近行った施設整備の中から特色ある施設整備の事例を集め,「キャンパスの創造的再生」につながる知恵やアイデアに焦点を当てて編集」したものである。
以前の国立大学の施設・建物は安普請で汚いの代名詞といっても言い過ぎではなかった。とくに戦後に新制大学として設立された大学ほどその傾向が強かったように思う。大学の施設・建物は学ぶ環境として大事な要素だ。ここに紹介されている37例(愛媛大学ミュージアムも含まれている)は大学関係者にとってはおおいに参考になる。
こんなところに金をかけるなら給料を上げろ,授業料を安くしろという声もあるだろうが,主な財源は「施設整備費補助金」であり――全額補助金によるという意味ではない。融資資金や自己資金がなければ実現しない――,それとこれとは筋が違う。大学の独自の判断でこの補助金を人件費にまわしたり,授業料納入分に振り替えたりできないのだ。大学の取組として素直に評価したい。
タイトル | 施設名 |
---|---|
教育研究活動を支える | - |
厚生施設群を図書館と一体のゾーンに集め,学生支援環境,学修環境を拡充・充実 | 千葉大学総合学生支援センター及びその周辺整備 |
外部空間を中心に厚生施設・講義室・事務機能を整備し,サテライトコアを形成 | 東北大学東キャンパススセンタースクエアー |
アトリウムを中心にしたスペースで共同研究を推進する世界トップレベルの研究拠点 | 東北大学インテグレーション教育研究棟 |
ラーニング・コモンズ機能,アーカイブ機能,インフォメーションラウンジ機能を実現 | 新潟大学中央図書館 |
異なる立場・領域に属する多くの関係主体のコラボレーションによる人材育成を目指す | 京都大学デザインイノベーション拠点 |
建物の中心に都市広場を設けた世界トップレベルの研究拠点 | 東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構研究棟 |
学生が主体的に活動し,自分の可能性を実現できる教育環境を整備 | 大阪大学ラーニング・コモンズ,グローバル・コモンズ,ステューデント・コモンズ |
大学施設として必要な研究環境を生み出すトータル・ビルコミッショニングの実践 | 名古屋大学研究所共同館 |
環境先進大学として,スマートキャンパスの実現に大学全体で取り組む | 三重大学スマートキャンパス実証事業 |
全人的な人格形成を促す | - |
キャンパス中心部にある広場をコミュニケーションパークにリニューアル | 電気通信大学コミュニケーションパーク |
多様な空間を提供し,進取の気風あふれる人材を育成する | 鹿児島大学学習交流プラザ |
既存の中庭をパブリックアートがあるアメニティ空間に再整備 | 名古屋大学全学教育棟中庭 |
日本人学生と留学生が共に生活し,入居者全員が交流する宿舎 | 金沢大学学生留学生宿舎「先魁(さきがけ)」 |
学生,留学生,教職員が共同で運営し,交流を深めるコミュニケーション・スペース | 九州工業大学ランゲッジ・ラウンジ |
学生自ら憩いの場を作り,交流を深める | 京都工芸繊維大学洛西寮中庭改造計画ウッドデッキ制作プロジェクト等 |
社会に開く | - |
全学が一体となってサステイナブルキャンパスを目指す | 北海道大学サステイナブルキャンパス事業 |
大学・自治体・地域住民が協力し策定された地区計画に基づき,潤いある歩行者空間を整備 | 名古屋大学鶴舞キャンパス緑道 |
広場を中心に建物を計画し,知的な出会いの場を形成 | 東京大学伊藤国際学術研究センター |
サテライト・キャンパスで,まちの活性化に寄与し,高専のプレゼンスを示す | 小山工業高等専門学校小山高専サテライト・キャンパス |
駅前広場と一体で社会に開かれた場を創造 | 東京工業大学蔵前会館(TOKYO TECH FRONT) |
閉鎖的な正門を地域に開かれた正門へ再整備 | 鹿児島大学正門周辺整備 |
新たな里山を意識し,学生・教職員・地域住民・行政等と協議しながら傾斜地を公園化 | 大阪大学豊中キャンパス東口環境整備 |
個性・特色を表す | - |
キャンパスマスタープランに基づき,地域と環境に調和した景観を計画的に創造 | 帯広畜産大学環境整備等 |
歴史的な建物と桜並木を生かし,大学の顔を整備 | 東京工業大学本館前プロムナード |
美術館と正門を一体で整備し,キャンパス全体を活性化する | 佐賀大学美術館と正門整備 |
木材の地産地消で教育研究環境を整備し,大学を地域にアピールする | 和歌山大学観光学部校舎 |
学術研究成果の公開・発信を行い,地域との新しいコミュニケーションの拠点を形成 | 愛媛大学ミュージアム |
交流を育む | - |
既設道路を改修し,学生中心のキャンパスを創る | 群馬大学荒牧キャンパス中央モール |
既存の通りを延長・拡充整備し,二つの門を結ぶキャンパスの骨格を創る | 鹿児島大学ふれあい通り |
メインストリートを軸にパブリックスペース等を整備し,キャンパスの活性化を図る | 横浜国立大学環境整備等 |
学生支援施設群に屋外パブリックスペースを設け,学生サービスを向上し,交流を誘発する | 島根大学ビビットプラザ |
正門の動線を整理し,開放的でゆとりのある空間を整備する | 茨城大学正門前広場 |
天候に左右されない屋根に覆われたパブリックスペース | 金沢大学自然科学本館(アカデミックプロムナード) |
時代を紡ぐ | - |
創立当初からの景観を継承し,パブリックスペースを充実する | 京都大学時計台周辺環境整備 |
歴史的建物と周辺環境のリニューアルで大学のシンボルとなる空間を整備 | 大阪大学大学会館(旧イ号館),学生交流等北側広場,中山池周辺整備 |
歴史的建造物群を保存しつつ一般市民に公開 | 神戸大学登録有形文化財等改修整備 |
近代建築の保存・改修により,大学の歴史と伝統を継承する | 名古屋大学豊田講堂増築・改修整備 |
- 1年前のエントリー
- 今年も円周率・アインシュタイン・マルクス・BUNTEN記念日→https://akamac.hatenablog.com/entry/20130314/1363271637
- 2年前のエントリー
- 3年前のエントリー
- 4年前のエントリー
- 『季刊 読書のいずみ』第122号→https://akamac.hatenablog.com/entry/20100314/1268572129
- 円周率・アインシュタイン・マルクス・BUNTEN→https://akamac.hatenablog.com/entry/20100314/1268572130
- 5年前のエントリー
- 6年前のエントリー
- 池尾愛子著『赤松要――わが体系を乗りこえてゆけ――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20080314/1205489146
- 7年前のエントリー
- 早坂啓造著『「資本論」第II部の成立と新メガ――エンゲルス編集原稿(1884-1885年・未発表)を中心に――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20070314/1173851103