書誌情報:大月書店,331頁,本体価格2,500円,2013年10月21日発行
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2007年1月に発行されている『MAMOR』という月刊誌がある。毎号の表紙では人気アイドルが自衛隊の制服を着て敬礼をしている。「防衛省が編集協力しているからできる肉薄取材で,その活動内容と,自衛官の素顔に迫る,わが国唯一の自衛隊オフィシャルマガジン。」を標榜している(→http://www.fusosha.co.jp/magazines/mamor/)。防衛省のソフト戦略と出版社の思惑が一致し,関係者しか読まなかった『セキュリタリアン』を『MAMOR』に変身させた。もちろんキーワードは「守る」である。恋人・家族・仲間を「守る」ことから人々や国を「守る」自衛隊というメッセージとイデオロギーが強く発信されている。
人気俳優を起用し「守る」をキーワードにしている自衛隊協力映画は『MAMOR』以上に影響力が強い。2013年だけでも『名探偵コナン 絶海の探偵(プライベート・アイ)』(海上自衛隊全面協力),『図書館戦争』(陸上自衛隊・航空自衛隊協力),『永遠の0ゼロ』(航空自衛隊協力),TBSの『空飛ぶ広報室』(航空自衛隊全面協力)と続いた。
著者は,『今日もわれ大空にあり』(1964年)から『聯合艦隊司令長官 山本五十六』(2011年)までの35本の自衛隊協力映画をひとつひとつ分析し,それら作品の「ポピュラー文化の政治性」(15ページ)を描いていた。怪獣映画の「戦争映画」としての見方,フィクションであることによって「専守防衛」への不満の表出,日本国民=日本民族と見る文化ナショナリズムなど作品分析から抽出した文化産業としての映画の特徴と文化政策が浮かび上がっていた。
たとえば,『マリと子犬の物語』(2007年)は,文科省少年向・家庭向選定映画,厚労省社会保障審議会特別推薦児童福祉文化財,厚労省社会保障審議会特別推薦,日本赤十字社推薦,である。制作委員会のメンバーは日テレ,東宝,アミューズソフトエンタテイメント,ホリプロ,読売テレビ,小学館,読売新聞社,札幌テレビ,宮城テレビ,テレビ新潟,静岡第一テレビ,中京テレビ,広島テレビ,福岡放送,である。防衛省大臣官房広報課,陸上自衛隊,陸上幕僚監部広報室,陸上自衛隊広報センター,東部方面総監部広報室,第12旅団,第30普通科連隊,第12特科隊,第12ヘリコプター隊,第12後方支援隊,第12旅団司令部広報室の協力があった。「2005年以降に公開された一連の自衛隊協力映画(『戦国自衛隊1549』,『亡国のイージス』,『男たちの大和/YAMATO』,『日本沈没』,『俺は,君のためにこそ死ににいく』,『ミッドナイトイーグル』,『マリと子犬の物語』を指す:引用者注)のテーマは,とにかく「守りたい」の一色である」(226ページ)。
「専守防衛」から「集団的自衛権」容認へはなるほど一夜にして変わったのではない。
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