557経済理論学会編『季刊 経済理論』第49巻第2号

書誌情報:桜井書店,105頁,本体価格2,000円,2012年7月20日発行

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ベーシック・インカム論は1980年代にヨーロッパで提唱され,すべての個人に所得を無条件で給付しようという考え方である。評者の同級生・小沢修二の『福祉社会と社会保障改革――ベーシック・インカム構想の新地平――』(高菅出版,2002年,[isbn:9784901793049])が日本では先駆的労作になる(「ベーシック・インカム論花盛り」→https://akamac.hatenablog.com/entry/20100511/1273589224)。
特集は学会としては初めてとりあげるテーマである。ベーシック・インカム論の特徴は「世界的にも,日本国内においても,新自由主義から社会主義の立場まで,まさに百家争鳴,百花斉放の状態」(福島「特集にあたって」3ページ)にある。ベーシック・インカム論の論点とその含意,さらには政策としての実現可能性など今後の展開を論じるさいには参照されることになる力作が並んでいる。
知見の保険の金融化――マイケル・サンデル著(鬼澤忍訳)『それをお金で買いますか――市場主義の限界――』でも問題としていた。→https://akamac.hatenablog.com/entry/20120628/1340897222――を経済的保障機能後退とみる分析は納得できる。

ジャンル 執筆者 タイトル
特集 ベーシック・インカム論の諸相――これからの日本社会を展望して―― -
- 福島利夫 特集にあたって
- 伊藤 誠 ベーシックインカム構想とマルクス経済学
- 小沢修二 ベーシック・インカム論議を発展させるために
- 成瀬龍夫 日本の社会保障改革とベーシック・インカム構想
- 村岡 到 生存権所得〉の歴史的射程
論文 薗田竜之介 開放経済におけるコンフリクト,国際競争,経済成長
- 田添篤史・劉歓 人口圧による集約度上昇と一人あたり産出の変動――モデル化の試み――
- 知見邦彦 米国における保険の金融化
書評 建部正義 山田喜志夫著『現代経済の分析視角――マルクス経済学のエッセンス――』
- 藤岡 惇 林公則著『軍事環境問題の政治経済学』
- 宮田和保 大谷禎之介著『マルクスのアソシエーション論――未来社会は資本主義のなかに見えている――』
- 柴田徳太郎 岡本悳也・楊枝嗣朗編著『なぜドル本位制は終わらないのか』
- 川崎志帆 森岡孝二著『就職とは何か――〈まともな働き方〉の条件――』(→https://akamac.hatenablog.com/entry/20111220/1324391872
書評へのリプライ 井村喜代子 『世界的金融危機の構図』に対する書評(評者:建部正義氏)へのリプライ
- 有井行夫 マルクスはいかに考えたか――資本の現象学――』に対する書評(評者:唐渡興宣氏)へのリプライ
震災・原発問題福島シンポジウムとその集会宣言(八木紀一郎 - -
論文の要約(英文) - -
刊行趣意・投稿規定 - -
編集後記(竹野内真樹) - -