075経済理論学会第58回大会初日

昨夜の幹事会に出て,今日からの本番の大会に出席した(経済理論学会http://www.jspe.gr.jp/)。まず午前中の第1分科会(共通論題関連)の東浩志(東京自治体問題研究所)「<新しい社会経済システム>をどう構想するか」と大西広京都大学)「問われているのは景気対策ではなく構造転換――新自由主義に帰結したケインズ主義に警戒を――」を聞く。
昼の幹事会のあと第12分科会(資本論研究)で大村泉(東北大学)「マルクス資本回転論の論理構造――エンゲルスによる『資本論』第2巻第2篇編集の根本問題――」と早坂啓造(岩手大学・名)「『資本論』第II部第3篇の構成をめぐって――MEGA2II/13の編集を通して見えてきたもの――」のコメンターをつとめる。いずれもMAGA編集と『資本論』をめぐる論争点にかかわるもので,報告者の問題意識と論点を明確にするコメントを心がけたつもりだ。同時に開催している7つの分科会のうちもっとも多くの参加者が集まり,MEGA編集への関心の強さを実感した。第3報告の大谷禎之介「マルクスのmonied capitalという語はどこからきたのか」は別の研究会で聞いていたが新発見があった。『資本論』第3巻の草稿のなかで monied capitalist という語で capitalist を使っていたとう事実だ。monied capital は Tooke から援用するかたちでマルクスが草稿において多用した言葉である。しかし,エンゲルスが現行『資本論』を編集するときにこれを「貸付資本」,「貸付可能資本」,「貨幣資本」などの語に換えた。もともとマルクスはこれらの機能を担う人間を monied capitalist と表現し,利子生み資本の人格化,monied capital の人格化として理解していたことになる。
いずれにしてもマルクスの生存中 monied capital (capitalist) というタームは英語圏ではすでに日常的に使われていた言葉であり,それをマルクス独自の意味で使ったということを確認できる。
分科会終了後,特別講演――James Heinz (University of Massachusetts), Decent Work, Globalization, and Crisis: Rethinking Employment Policy for the Current Era――,総会と,評者にしては珍しくすべてのプログラムに出席した。
関西大学100周年記念会館ホールという立派な会場の懇親会では,アンテナにある nohalf さんとも話ができた。学会の懇親会は,同窓会でもあり,旧交をあたためる場でもあり,評者にとっては一年に一度の貴重な機会だ。懇親会を途中で切り上げ,関大前の居酒屋「フランシス・ベーコン」でMEGA編集仲間らと二次会で合流したのだった。