002小沢修司著『経済がみえる 元気がみえる』

akamac2007-02-06

書誌情報:法律文化社,1992年8月30日,210頁,本体価格1,200円,ISBN:458901677X
初出:『京都民報』第1544号, 1992年9月20日

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「栄養のあるスナック本」。意表をついたタイトルが飛び込んできました。著者は京都府立大学女子短期大学部(当時:評者)の小沢修司さん。
普段の生活と暮らし,コミック,新聞,映画,コンサートなど小沢さんの実体験から一見難解な経済そして経済現象に切り込んだすばらしい本です。とかく「重いものを重く表現する」経済の本。小沢さんはその「重いもの」を軽く料理してみせました。それがこの本『経済がみえる 元気がみえる』です。
この本はみなさんなじみの雑誌連載から生まれました。全国保育団体連絡会の『ちいさいなかま』,大阪よどがわ市民生協の『プロシューム』がそれです。臨場感もなまなましく連載当時の文意をそのままに,自在に編集しなおしました。
イラスト満載の楽しい劇場をご案内しましょう。第1幕は「経済のしくみ」です。ここでは「重い重い」はずのテーマを扱っています。投機,社会保障,消費税,医療,ODAなどなど。しかし,不思議です。小沢さんの手にかかるとなんかしらその本質がみえてくるようになるのです。それもそのはずです。素材はたしかに「重い」現実なのですが,トレンディーなネーミングがとっつきやすくしており(それぞれの文章を「場」と呼んでいます),軽い筆致ながら勘所を鋭くおさえているからなのです。
第2幕は「生活のしくみ」です。ここでも小沢さんは「ぼ,ぼくの人生を返せぇ!」という調子で,子ども,食と健康,ゴミ,クルマなど生活に直結するテーマを見事な包丁さばきで料理しています。
そして第3幕。「しくみ」をときあかすだけではありません。「元気のしくみ」と題してわたしたちに「元気の素」まで提供してくれています。いろんな「場」に身をおきながら,ちいさいちいさいながら大きく成長するであろう芽を見つける作業をおこなっています。それも小沢さんが直面したあるいは見聞した貴重な経験からです。さわやかな感想をもって読み終えることができるのは,悩みながらも力強い息吹をもつ働くなかまへの熱い思いがあるからなのでしょう。
でも,「栄養」があってもやはり「スナック」。小沢さんは事物・現象の本当の姿を知ったときの喜びを分かち合いたいのです。本格的な日本料理への挑戦を期待しているのです。女子大生とのインタープレイをとおした劇の上演は,わたしたちをつぎなる劇の上演に誘います。この本で伝えたかったことをこう読みました。みなさんもまずは読んでみてください。「読み始めたら,やめられない止まらない」となったら幸いです。
最後に編集者にお願い。コミックをかなり読みこなされていました。巻末にそれも含めて人名・書名索引があればもっと馴染みがでてきたでしょう。それから「ビジュアル」性をさらにもたせるために,表や図が配置されていると説得的たりえたでしょう。
そして小沢さんに。配偶者・お子さんとのインタープレイがもっともっと反映されていてもよかったのではないですか。ここははっきり言って遠慮のしすぎです。