本年2007年は宇野没後30年にあたるという。評者は一度も宇野の謦咳に接することはなかったが,戦前の宇野著・山田盛太郎著『資本論体系 中』(改造社,経済学全集第11巻,1931年7月),戦後の『恐慌論』(岩波書店,1953年9月)は学生時代に古書店で入手し,精読した本のひとつだ。『経済政策論』(弘文堂,1954年12月)は兄からのお下がりとして,評者の貧弱な蔵書の一角を占めている。法政大学出版局の『資本論五十年 上・下』や宇野弘蔵経済学ゼミナール(全3冊)も一読はした記憶がある。
それはともかくとして,宇野没後30年研究集会である。
- -
宇野理論を現代にどう活かすか――宇野弘蔵没後30年研究集会のご案内――
日本の代表的なマルクス経済学者の一人,宇野弘蔵先生は,1977年2月22日に亡くなられました。お生まれは1897年11月12日ですから,79才でした。今年は没後30年の年に当たります。先生は,日本資本主義論争に触発され,長年の『資本論』研究と経済政策論の講義を通じて,原理論・段階論・現状分析論の三次元からなる経済学の体系を創造されました。また,対象の客観的認識を目的とする社会科学と、それを基礎としつつも主体的実践によってその当否が検証されるイデオロギー的主張との峻別を主張し、両者の安易な結合による経済学の退廃を批判されました。
マルクス経済学が逼塞状態に陥ってから久しくなりますが,近年,大学院生も含めた若手を中心にSGCIMEというグループが『マルクス経済学の現代的課題』というシリーズの刊行を進めており,これまでに8冊が刊行されています。そこに収録されている論文には,宇野先生が提起された諸問題を受け,先生の解決をさらに深化させようとする研究が多く含まれております。先生の没後30年経った今でも,宇野理論はまだ生きており,宇野理論に何らかの学問的影響を受けている人達は,宇野理論を批判的に継承しようとする人達,あるいは宇野理論に積極的に異を唱えようとする人達も含めると,少しずつですが,増え続けているといっていいでしょう。海外の学界にも宇野理論への関心は広がりつつあります。この生命力の強靱さは,硬直化していたマルクス経済学の再生を願ってその伝統的な理解に再検討を迫った先生の真摯な学問的情熱が,若い人達や海外の仲間にも訴えるところが大きいからではないでしょうか。
私たちは,マルクス経済学の現状と,現在の宇野理論のさまざまな継承のされ方に鑑み,先生の没後30年の機会に,マルクス経済学をさらに活性化し,故きをたずねて新しい社会科学を創るきっかけとなるような記念集会を,下記のとおり開催したいと計画しました。研究者だけでなく,どなたでも参加できます。どうかふるってご参会くださいますよう,ご案内申し上げます。
世話人:櫻井 毅・山口重克・柴垣和夫・伊藤 誠
- 日 時:2007年12月1日(土) 研究集会:13:50〜18:10 懇親会:18:30〜20:00
- 場 所:武蔵大学8号館(正門を入って左手8階建ての建物)7階8702教室