元天津社会科学院日本研究所所長・由其民(1913-2006)は,東北帝国大学(当時)に留学中(1935年〜37年),宇野弘蔵(1897.11.12-1977.2.22)に師事したという。
留学を続けるか帰国して抗日運動に参加するかの選択を迫られ,直後に宇野が「教授グループ事件」(1938年2月1日)で逮捕される。
宇野は後に「一人か,二人でも,今も元気でいてくれるなら会ってみたいと,ときどき思うことがある。 あの動乱の中で(日中戦争だけでなく文化大革命も含むか:引用者注),あるいはもうみんな亡くなってしまっているかもしれない」(『資本論五十年』)と書いていた。
由其民は宇野との対話から「宇野先生は戦争に反対し,我々が抗日戦争に参加すべきと考えられていたのである」と理解し帰国する。
由は50年代から「根拠のない罪名によって自由を失い,20年もの間,研究などの権利を奪われていた」。由は宇野への師事を,『日本研究論叢』(天津社会科学院日本研究所)1993年号(『中日関係史研究』2007年2期に再録)に書き残していた(下記「七十年前の日中師弟縁」が日本訳)。
師弟関係は暗黒時代のさなかにあって惜別の機会がないまま無理矢理中断されたままだった。
- 「宇野理論を現代にどう活かすか」
- 由其民「七十年前の日中師弟縁――宇野弘蔵先生の追憶――」→(「宇野理論を現代にどう活かすか」Newsletter (12))http://www.unotheory.org/files/Newsletter1-12.pdf
- 大内秀明「もう一つの「惜別」――由其民と宇野弘蔵――」→(「宇野理論を現代にどう活かすか」Newsletter(2-2))http://www.unotheory.org/files/2-2-4.pdf
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