131荻上チキ著『ウェブ炎上――ネット群集の暴走と可能性――』

書誌情報:ちくま新書(683),221頁,本体価格700円,2007年10月10日

ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性 (ちくま新書)

ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性 (ちくま新書)

  • -

本書のキーワードのひとつはサイバーカスケードだ。サイバースペースにおける極端な評論・言動によって集団として滝のように流れていってしまう現象のことをいう。「立ち位置のカスケード」「争点のカスケード」によるカスケード論(「争点のカスケード」をさらに「潜在的」と「顕在的」にわけて説明)は,社会学理論の著者による具体化である。ただし,「立ち位置」と「争点」によるカスケード論とジェンダーフリー問題で指摘している「二重のカスケード」とは別のものだろう。
サイバーカスケードは,インターネットが「可視化」と「つながり」を特徴としていることによるネット特有の現象であり,「ウェブ独特の力学」(77ページ)だ。「ウェブ以後の社会問題」(同)については言及はされていないようにみえた。「これまで起こってきた現象が」「これからも形を変えて起こり続ける」あるいは「これからは形を変えて起こり続ける」(213ページ)との指摘はまさにその通りだ。
インターネットの楽観論と悲観論を超えて,その可能性を追求する姿勢には共鳴する。著者によるジェンダーフリーをめぐる対抗カスケードの実践やハブサイト構築も参考になる。
著者のブログ「荻上式BLOG」→http://d.hatena.ne.jp/seijotcp/