105新しいリベラル・アーツとはなにか

日本学術会議編『学術の動向』2008年5月号が「21世紀の大学教育を求めて─新しいリベラル・アーツの創造─」のタイトルで特集を組んでいる。たんなるリベラル・アーツではなく「新しい」と形容詞が付くのは,一言で大学の大衆化がもたらした大学の多様化と大学生の学力低下をむかえ,それに対応したものでなければならないという危機感があるからだ。
リベラル・アーツ論は教育の質をどのようにして向上させるのかと直結するのはよくわかる。と同時に,欠けているものがある。大学の大衆化は大学教員の大衆化ももたらしたという事実の直視である。文科省の「学校基本調査」(http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/001/08010901/index.htm)によれば大学の教員数は167,636人(国公私立大学の本務者,2007年度)である。大学生の質を問題にするのなら,教員の質をも問題にしなければならない。本を読まない教員なんてざらにいる。
雑駁な感想を言っても埒があかない。ともあれ,「新しいリベラル・アーツ」論をご覧あれ。すべてpdfファイルで読むことができる。(http://www.h4.dion.ne.jp/~jssf/text/doukousp/2008-05.html)。目次を以下に。

タイトル 執筆者
特集にあたって 油井 大三郎
欧米におけるリベラル・アーツの起源と教訓 潮木守一
日本のリベラル・アーツの歩みとこれから 長谷川寿一
環境危機の時代のリベラル・アーツ 鷲谷いづみ
科学技術時代のリベラル・アーツ 野家啓一
総合政策学部リベラルアーツ 奥野信宏
私のリベラルアーツ論─自然科学の立場から─ 池内 了
リベラルアーツパラドックス 山岸俊男
新しいリベラル・アーツを求めて 今田高俊
15歳児の学習到達度調査(PISA)が示唆すること─男女の読解力と女児の数学力の低下─ 大沢真理